「きのうは まえの日
きょうは ほんとの日
いよいよ ぼくの
たんじょう日」
八月二十九日は、「たんの・たんた」の五歳のお誕生日。たんたが朝飛び起きて窓を開けると、白いふうとうが飛びこんできました。開けてみると、曲がりくねった太い線と細い線や三角や丸、矢印が。どうやら、たんけんの地図のようです。
早速たんたは、たんけんに出かける準備を進めます。向かったのは、ぼうしやさんと、おかしやさんと、おもちゃやさん。たんけんに必要なものを探していきますが、あれあれ? いちいちたんたの真似をして後からついてくるのはいったい誰なのでしょう? その子に気づかないまま、準備が整ったたんたは、たんけんにいざ出発します。 向かう先は、地図に書いてあった「ライオン山」。松の木に登ったり、しっぽ川を飛び越えたり。夢中で進むたんたの後ろをちゃあんとさっきのかわいい子が真似しながらついてきていて‥‥‥。
子どもにとって、自分のお誕生日というのは特別な一日ですよね。一年のうちでも一番待ち遠しい日なのではないでしょうか。たんたが口ずさむ歌からも誕生日を待つ嬉しい気持ちがたっぷりと伝わってきます。そんな嬉しい誕生日に、こんなにワクワクする「たんけん」がやってきたとしたら。
たんけんの途中で仲間になる誰かさんもとっても愛らしくてキュート! 仲間ができたことでいっそうたんけんの楽しさが広がります。
1971年の刊行以来、約50年も読み継がれているこちらのお話。お話を作られたのは「ぐりとぐら」シリーズでおなじみの中川李枝子さんと山脇百合子さんのコンビ。いちいちたんたの真似をする誰かさんがいたり、たんたがその存在になかなか気づかなかったり、おかしやで「いますぐなめても、おひるまでありますよ」と言われて買ったキャンディの大きさをときどき口の中で確かめたり、ジャングルの中におかしな家を見つけたり、等身大の子どもたちの気持ちに寄り添った喜びがたくさん詰まっています。子どもたちはその喜びや嬉しさを味わいたくて何度も何度も繰り返し読むのでしょう。
たんたと同じ年頃の4〜6歳ぐらいの子どもたちに読んであげたい幼年童話の名作です。ひとりで読むなら小学1、2年生から。表紙を開いたところの見開きページには、たんたに届いた「たんけんの地図」が載っています。この地図をじっくり眺めながらお話を読んだり、お話の後でたんけんの道のりをたどってみたりすると面白いですよ!
たんたのお話は他にももう1つ。『たんたのたんけん』が気に入ったら、次はたんたが謎と出会う『たんたのたんてい』もぜひ合わせて読んでみて下さいね。
(秋山朋恵 絵本ナビ編集部)
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