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沖繩の一孤島に生まれ育った太良は,あるききんの年,役人の船を島へひっぱりあげ…。★よい絵本選定★第25回毎日出版文化賞
これは、私の一方的な思い込みかもしれませんが、
沖縄の人は、大変に柔軟だと思います。
多少困ったことがあっても、「なんくるないさー」
(なんとかなるさ)と笑っていえる。
器の大きさを感じます。
(特に、女の人は強い)
台風(これがまたとてつもなくでかくて、何日も居座ったり、一度行ったと思ったらまた帰ってきたりもする)などの自然の驚異や、
搾取や、戦争などで、汗や血を流してきた沖縄の人たちだからこそ、かもしれません。
このお話は、浜に近い丘の上に、赤ん坊が捨てられていたことからはじまります。
人々は、彼を、「天女さまの子」とささやきます。
ひろったおじいは、「太良(たらあ)」となづけ、大変にかわいがります。
ところが、この太良、体が大きくなっても、ちっとも働かない。
いびきをかいて、がじゅまるの木の下で眠っているばかり。
そして、ある日、台風がやってきます。
すべての食べ物が流されて、島人がみなお腹をすかせていると、船がやってきた。
自分たちを助けてくれると思った島人は、実はその船が
年貢を納めさせる為に来たのだと知り、愕然とします。
そこへ、太良があらわれた…
最初のさわりを聞いて、桃太郎を思い浮かべた方も多いと思います。
けれど、こちらは、最後には何もかも手に入れてみんな万万歳の桃太郎とは違い、大変にせつないお話でもあるのです。
なぜ、こんな最後になっているのか。それは、作者の儀間さんのあとがきに、説明してあります。
そうか、こういう考え方なのか…
私はとても驚き、そして、感動しました。
ー沖縄はけっしてうわべだけの「守礼のくに」ではありません。
また、くるしい生活をただじっとがまんするだけの島人たちではありません。
いまでも沖縄の人たちは、自分たちのほんとうの生活をかちとるために、たたかいつづけていますー
と儀間さんは書いておられます。
沖縄の好きな方は、世の中に多数いらっしゃると思います。
でも、ぜひ、沖縄へお出かけの際は、
青い海や、琉球料理だけではなく、こうした「沖縄のたたかい」にもちょっと目を向けていただきたいと思います。 (ルートビアさん 30代・ママ 男の子4歳)
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