朝早く、池に釣りに出かけたときのこと。
フワフワと飛んできた白い泡のようなもの、どこからきたのか確かめに行くと、そこには大きな泡のかたまりが。
「プク、ブクブクブーツ」
こっちめがけて泡をふいたぞ。何するんだよ、失礼しちゃうなぁ。
頭についた泡を振り払うと、帽子が無い。足に付いた泡を振り払ったら、長靴がなくなって裸足になってる。
どういうことだろう・・・?
雲のように真っ白くて、ふわっふわの泡。なのに、ぎょろり大きな目と鼻、すぼめた口はひょっとこみたい。
一体何者?おばけ?妖怪?
こちらは早朝、ため池の周りに出没する「泡テッポウ」、あわぶくの「精霊」なんです。得意なことは・・・物を隠すことなんですって!
妖怪が好き、怖いものをちょっとのぞいてみたい。そんな子どもから大人まで幅広く心をとらえた大人気の『大接近!妖怪図鑑』、その第2弾が登場しましたよ。
今回はなんと!作者の軽部武宏さん本人が、野山や田んぼ出会った?!22の精霊をそのエピソードをまじえて紹介するという図鑑絵本なんです。
自然界に息づく、見えそうで見えないヘンテコな神様、精霊たち。
ドーンと79センチもの両開きページの大迫力で登場するのは「野火童子(のびどうじ)」。野焼きをしている原っぱの中から大きく見開いてこちらを見つめる瞳、ふっくらおもちのような白肌が赤く染まる頬の質感は、思わず手を伸ばして触れてしまうほどリアルで、ドキッとします。
「どーいーてぇー、どーおいてー」田んぼの畦道でそんな声がして夜空を見上げると、こちらを見つめてるのは触角のはえた白い月。「畦水青(あぜみずあお)」ともし目が会ったら、後ろも振り返らずに一目散に駆け出しちゃう!
ページいっぱいに描かれる怪しげで奇妙で、不気味さの中に美しさすら漂わせる精霊たち、その姿や表情は怖いけどやっぱり見たい、知りたい。その独特の魅力から目が離せないのです。
ハイキングで行く野山や川、雨上がりの水たまりや小屋の壁、夕陽に沈む大地。
ふとした瞬間に視線があったり、「おいでぇ〜、おいいでぇ〜」「ぺチロチローン、デリョーリ」なんて初めて耳にする物音や声が聞こえたりしたら・・・軽部さんだけではないですよ、みなさんのすぐそばにも、ほら。
妖怪に続き、一度ページを開けばすっかりやみつきになってしまう精霊ワールドがあなたを待っています。
(竹原雅子 絵本ナビ編集部)
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