ハムスターのビリーのパパは有名なギャング。
だけど、一つだけ心配事があります。
息子のビリーの性格が良すぎて、立派な悪者になれないんじゃないかってこと。
とにかく練習してみようと、パパはビリーにベルト、覆面、帽子を用意し、さらにたまを抜いた拳銃を渡します。
「だいじなのは、あいてをこわがらせることだ。あいては だれでもいい。キツネにだけはきをつけるんだぞ」
そう言われてビリーは、しぶしぶ外に練習に出かけます。
なるべくちっちゃい相手で練習した方がいいな…そう思った時に、ビリーの前を「ミミズ」が通りすぎます。
ミミズならなんとかなるだろうと、ビリーはミミズに近づいて、拳銃をかまえ、できるだけきっぱりした声で言います。
「てを あげろ!」
おっ、なかなかビリーさまになっているね。
そう思ったのもつかの間。ミミズは答えます。
「ぼく、てがないんだけど……」
確かにそうです。いいよ、いいよ。これ練習だから。
そう言って、今度はネズミの女の子を見つけて挑戦します。
「てを あげろ!」
女の子が跳ね起きた途端、ビリーは怒られてしまいます。
「やあだ、おおきな こえを ださないでよ」
さてさて、こんな調子でビリーは立派なギャングになれるのでしょうか。
でも、もうそんな事はどうでもよくなっちゃうくらい、ビリーと、ミミズのジャン=クロードと、ネズミの女の子ジョゼットのやりとりが可笑しくて仕方がありません。みんなちょっと個性的だけど、とっても気がよくて、あっという間に友だちになってしまいます。特にジャン=クロードは、絵本界史上、一番チャーミングなミミズかもしれません。作者は、「あたたかくて、へんてこりん」な作品が魅力のオランダの絵本作家カタリーナ・ヴァルクス。とにかく登場するキャラクターが面白いのです。
あっ、話がそれてしまいましたが、結局ビリーは立派にやってとげるんですよ。
何をって?もちろん、キツネをおどかすんです。格好良かったですよ。その姿は読んでのお楽しみ!
「ハムスターのビリー」シリーズは、『つかまえろ!』『インディアンは どこ?』もとびっきり愉快なお話です。合わせて読んでみてくださいね。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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