「わたしは ちいさな みずたま」という言葉ではじまる、水の絵本。
スイスの作家がコンピューターグラフィックで美しく描く本書は、いわゆる「科学絵本」のイメージからはちょっと離れた印象です。
ネコが水を飲んだ、ボウルの底にひとつぶ。
残ったみずたまは、
「そうだ、たびに でかけよう!」
小さな粒になり、空に舞いあがります。
雲といっしょに旅をして……高い山にぶつかり、雪の結晶になります。
地上でまたみずたまに。地表をすべりおりて地下へ。
水脈から川へ、海へ。
旅はさらにつづきます。
「みずたまに もどった わたしは、
へんてこな石の うえに おちた。」
詩的でシンプルな言葉を、みずたまの旅を味わうように、ゆっくり声に出して読んでみてください。
洗練された色彩、動植物のフォルムがあざやか。
どのページを開いても、控え目ながら、どこか生き生きとしたグラフィックが印象に残ります。
『ぼくはここで、大きくなった』で2009年にフランスの「科学の本」賞を受賞。
作者のセンスを感じる、アートの趣のある科学絵本です。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
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