「くうきにんげん をしってるかい?」
誰も気づいていないけれど、くうきにんげんは世界中にたくさんいる、らしい。
目には見えなくて、形も自由自在。
だから、どんなに戸締りした家だって、かぎのかかった部屋の中にだって……。
「くうきにんげんは ふつうの にんげんに おそいかかって、
くうきに かえてしまうのさ。」
空気にかえられるってことは、見えなくなるってこと?
お父さんにも、お母さんにも、誰にも気づかれなくなるってこと?
「ほら、きみの そばにも」
そこにいるのか、いないのか。
なんだかわからない、目に見えない。
だけど、とてつもなく恐ろしいような。
本格ミステリー作家と絵本作家がタッグを組み、極上の「怖さ」を生み出す「怪談えほん」シリーズの新作は、綾辻行人と牧野千穂が見えない魔物を描き出す。
澄んだ青空に飛んでいく、黄色い風船。とても美しい風景は、だけど「知ってしまった」子にはどんな風に見えているのだろう。うさぎの子の、まっすぐに見開いた輝く赤い瞳の先に見えているものは?
どうしてこんなに怖い絵本が描けるんだろうと思う一方で、その怖さは想像力があるからこそ味わえる世界なんだということも知っている。いや、もしかしたら本当にこういう事態に面することだってあるかもしれない。存在を感じているからこそ、広がっていく世界というのもある。
知っている方がいいのか、知らない方がいいのか。
良質な本物の怪談の世界、触れてみても損はないかもしれませんよ。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
続きを読む