末っ子を描いた『ティッチ』や『ロージーのおさんぽ』などが人気のパット・ハッチンスのお話絵本です。
主人公はこれまで一度も字をおぼえようとしたことがない男の子、トーマス。
先生が「字をおぼえなさい」と言っても「かんけいないね」。
「ペンキぬりたて」の立て札が読めず、頭からペンキをかぶることになっても「かんけいないね」。
デパートの扉の<ひく>を押して、外へ出ようとしたお客さんたちをひっくりかえしても「かんけいないね」。
何事にも「かんけいないね」とへっちゃらのトーマスが巻き起こす珍騒動。
くすっと笑いたくなるやりとりが繰り返されます。
とうとうトーマスは警察につかまって……!?
さあ、トーマスは字をおぼえる気になるのでしょうか。
おもしろいのは「誰が」最後にトーマスに字を教えたかってこと!
まさか字が読めないためにこんなことまで起きないでしょ、と言いたくなるのですが、それはそこ、パット・ハッチンスらしい茶目っ気が漂います。
黄色みの強い色彩、表情や動作をとらえた線、吹き出しのせりふがヨーロッパの漫画絵のような雰囲気。
トーマスは最後の最後まで「かんけいないね」ですが……。ちょっぴり人生は変わったみたい!?
字をおぼえたら楽しいこともあるかもよ、とユーモアたっぷりにハッチンスさんが誘っていますよ。
読んであげるなら3・4歳くらいから。小学校低学年の一人読みにもおすすめ。
翻訳家・小宮由さんがえらぶ幼年童話「こころのほんばこ」シリーズ第3弾です。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
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