“きつねの こは、はしの いたの うえに、こわごわ あしを のせました。あしもとがゆうらり ゆれました。
「ひとつ、ふたつ、みっつ……。」
みっつ あるいた ところで いたの すきまから、あおく すんだ かわの みずが みえました。とたんに あしが すくみ、まえへ すすめなく なりました。”
谷川にかかる細いつり橋。ある日、きつねの男の子のこんすけは、友だちのくまの子とうさぎの子といっしょに、橋のたもとに遊びにきました。おそるおそるむこう側をのぞき込んでいた3匹は、橋をわたって来たいのししのおじさんから、反対側にはきつねの女の子が住んでいると聞きます。その子と遊びたい一心で、こんすけは翌朝からひとり、つり橋をわたる練習をはじめます。
はじめての朝は3歩。次の朝は5歩。そのまた次の朝は6歩……。朝早く、まだ誰も通らない時間にやってきては、毎日少しずつ、昨日よりも遠くへと進んでゆきます。
おそるおそる、でも着実に、まだ見ぬ新しい世界へと踏み出していくようすが、かわいらしくもたのもしいお話です。このくらいの年頃の子どもたちにとってはこんなちょっとしたことが大冒険。みんなにはないしょのところがワクワクドキドキ感を高めてくれます。すべてのページにつちだよしはるさんのほんわかあたたかい絵が添えられていて、風がふいてつり橋がゆれると、こんすけといっしょにどきっとしたり、足がすくんだり。まだ見ぬ世界への好奇心とおそれの間でゆれる気持ちが伝わってきて、応援する手にも思わず力がこもります。
さあ、こんすけはきつねの女の子と会えるのでしょうか?
(三木文 絵本ナビライター)
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