「さむい季節にやってくる、
まっ白いサーカスが。」
北のはずれの、さらに北。
氷の国からくじらに引かれてやってくる。
一年に一度、水平線の向こうから顔を出すのは北極サーカスのテント。
待ちわびていたのは、北の国に暮らす人や動物たち。
ドゥラララララ……
テントに響くドラムの音が呼びかける。
「さあ、はじまるよ! はじまるよ!」
そこに登場するのは、青いライトに照らさせた白い毛皮の団員たち。
ああ……
なんて美しく幻想的なのでしょう。
不思議で、ゆかいで、なぜだか少しかなしくて。
庄野ナホコさんの描く「ゆめのような 白いサーカス」の世界。実在するかしないかは関係なく。それは、一目見た者の心に、あっという間に憧れの気持ちを植えつけてしまうのです。氷に浮かぶテント、月の光に照らされた空中ブランコのシーン、そして絵本のしかけを使って繰り広げられるクライマックスの大技。そこが例え北の果ての知らない国でも。どんなに凍てつくような寒さの季節でも。いつかこの目で見てみたい、と。
子ども達が大人になって、ふと思い出した時。
「この絵本を開けばいつだって白いサーカスに会えるんだ!」
そう気がついてくれるのが楽しみになる一冊です。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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