家族のことを、好きかと聞かれたら?
この物語の主人公「サキ」は、今はとても「好き」だなんていえる気分じゃないようで……
「おねえちゃんなんか、だいきらい」
サキは、お友だちと遊びにいってしまったおねえちゃんの代わりに、借りた本を返すため図書館に向かっていました。
重たい本がたくさん入ったカバンのせいで、肩はズキズキ、心はイライラ……
「おねえちゃんの、ばか、ばか、ばか!」
おねえちゃんの悪口をいいながら道を歩いていると——
「おじょうちゃん、アメ、いらないかい?」
サキに話しかけてきたのは、なんと魔女の飴屋!
魔女はサキに、「おすすめの、とっておきのアメ」を売ってくれました。
それは、だれかの悪口を10個言いながら混ぜるととてつもなく不味いアメになるという、「のろいアメ」でした。
「のろいアメ」はあまりにもまずくて、それを食べた人は丸一日気絶したまま目覚めないといいます。
のろいアメを完成させるために、おねえちゃんの悪口を考えるサキ。
10個どころか、20個でも30個でも言えてしまえそうだと意気込むサキだったのですが——?
家族って、ほんとにむずかしいですよね……。
そんなふうに悩むのは子どもも大人もおんなじなんだよなあと、しみじみ感じ入ってしまいます。
ずっといっしょにいるからこそ、きらいなところだって好きなところだって、たくさんある!
ぜんぶひっくるめて、わたしたちは家族なんだ――
そんなメッセージを力強く発信する、あたたかな作品です。
良からぬたくらみを持ちながらも、どこかひょうきんで、間の抜けた魔女。
かわいらしい彼女のおかげか、「家族の嫌いなところを思い起こしていく」という物語ながら、まったく重たい雰囲気はありません。
サキに渡した「のろいアメ」が成功したら、もっとたくさんの人間にばらまいてやるんだと魔女はほくそ笑むのですが……サキのつくる「のろいアメ」が、思わぬ結末を招くことに――!?
そこにいることがあまりにも当たり前になってしまっている、家族という存在。
そんな家族をあらためてちがう角度から見つめ、とらえなおすきっかけになる一冊です。
(堀井拓馬 小説家)
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日曜日、サキはお姉ちゃんが借りてきた本も一緒に図書館に返しに行くことになりました。お姉ちゃんは、遊びに出かけてしまったのです。
図書館に行く途中、いつもはない「アメ屋」と書かれた屋台を見つけました。すると、屋台のおばあさんが、実は自分は魔女なんだと言いだしました。そして、魔女はとっておきの「のろいアメ」をサキに売ってくれると言うのです。のろいアメは、だれかさんの悪口を10個言いながらまぜてつくるアメ。それは、苦くてからくてすっぱくて、食べた人はひっくり返るくらいまずいアメになるそうです。サキは、魔女からのろいアメを買うことにしました。
サキは、早速お姉ちゃんの悪口を言いながらのろいアメをまぜていきました。おねえちゃんの悪口は、20個でも30個でも言えそうです。「おねえちゃんは、いばりんぼう。それに、くいしんぼうでうそつき……」と、言っていると、だんだんアメが固くなってきました。ところが……。
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