みけねえちゃん、ともくん、おかあちゃんは、どこにでもいる3人家族。
ただ、ふつうとちょっとちがうのは、「みけねえちゃん」が「話せるネコ」だというところ。
「みけねえちゃん! ひましてんのなら、ともくんをさがしてきて」
「わかったけど、あんまりアテにせんといてな。いうたかて、わたし、ねこやねんから」
「ふつうのねこは口答えなんてせんやろ!」
さいきん、ともくんの様子がちょっとおかしい。
ともくんの名前は「ともひろ」なのに、自分のことを「うーちゃん」と呼んて、お母さんが注意してもぜんぜんやめない。
心配したお母さんに頼まれて、学校にようすを見にいくみけねえちゃん。
みけねえちゃんはそこで、ともくんが「自分の名前がいや」とこぼしていたことを知るのですが——
様子がおかしいともくんのナゾと、コミカルなみけねえちゃんのキャラクターに惹かれて読み進めていくと——
思わずオトナもホロリと涙!
たとえ家族でも――そして家族だからこそ、簡単には伝えられない言葉や、見せることのできない弱さがある。
これは、そんな家族のもどかしさを描いた作品です。
キッとしたツリ目のずんぐり体型。
「とろーり」としたおやつに弱いみけねえちゃんは、子どものように純真で、素直。
一方で、その人のためと思ったら言いにくもズバッと伝える強さや、人の気持ちに寄り添うことのできるやさしさも持ち合わせています。
「わたしに聞いて。なんでも答えるから」
「どういうことか、おねえちゃんにいうて。話したら、きっと解決できる」
ともくんにかけるみけねえちゃんの言葉の、なんてたのもしいことでしょう!
もしも、みけねえちゃんがいてくれたら――
ともくんたちがちょっとうらやましく思えます。
まあ、みけねえちゃんはこう言うでしょうけど。
「あんまりアテにせんといてな。いうたかて、わたし、ねこやねんから」
(堀井拓馬 小説家)
続きを読む
この頃元気のないともくん。明らかにSOSが出ているのに、その理由を誰にも話せないでいるみたい。どうやら、学校の宿題「自分の名前の由来」のことで傷ついてしまっているようなのですが……。みけねえちゃん、出番です。
編集者コメント
広くない人間関係の中で、こどもたちは、いちばん近しい大人の言動に傷つき、けれどその傷の正体がわからないまま、自分だけで抱えてしまうことがある。そこに、こどものためにという大義名分や無自覚に優先された大人の都合があると、自分のせい?とこどもは自分を責め、傷は深まる。その時にそれを自分以外に手放すことで、紛れもない「ほんとう」を誰かと共有することで、自分に似合う重さの荷物にしてつきあってほしいと願う。
続きを読む