池のそばの草むらで仲良く遊んでいるのは、ラッタ、チモ、アルノー。小さなアマガエルです。今日も大好きなかくれんぼをしているようですよ。
「もう いいかい?」
「まあだだよー」
ぴょんぴょん飛んでいきながら、ラッタが見つけた場所は木のくぼみ。あまりにも上手に隠れて見つからないので、アルノーもチモも心配になって声をかけると、アルノーはふたりの前にぴょんと現れた。ところが……なんだかへん! 体の色が変な色になっていたのです。一体どうしてしまったのでしょう。
「もし、わたしが陸に上がったばかりのアマガエルだったら…」と想定して書かれたというこのお話。確かに、突然自分の体の色が変わったとしたら。そんな変化を知らない「子ども」だったとしたら。驚くに違いありません。不安で怖くなるでしょうね。
だけど、作者の舘野鴻さんは教えてくれます。アマガエルというのは、実は大きくなるにつれ、周りの色に合わせて体の色を変えられるようになるんですって! つまり、自分の身を守るために体が「成長」するのです。この絵本に登場するラッタ、チモ、アルノー。彼らも、共に不安になりながら、鳥に食べられそうになる危機を乗り越えたことで、自らの「成長」に気づき、喜びを3匹で共有します。
だからでしょうか、このリアルに描かれた「アマガエル」の生態の物語が、なぜか自分のことのように、あるいは我が子の身に起きた事のように共感してしまうのです。その不安や驚き、そして喜びを一緒に味わってしまうのです。
こうして入り込める理由は、お話だけではありません。生物画家かわしまはるこさんが描くカエルです。擬人化しているわけでも、キャラクター化しているわけでもないのに、表情から感情が伝わってきますし、なにより愛らしい! これは不思議です。よく観察され瑞々しく描かれた背景に溶け込みながら、強烈な個性を放ち、アマガエルを好きにさせてしまう。子どもたちがこの絵本に夢中になってしまうのは、きっと自然なことなのでしょうね。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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