絵本を開いてすぐ、ちょっとおっかない表情をしたおじさんが、話しかけてくるところからこのお話は始まります。
「きみ、ちょうどいいところにきてくれた!
めがねが見つからないんだ。みなかったかい?」
え? わたし?
とまどいながらも、そーっと黒ぶちのめがねを差し出すと……
「そう! これ、これ!」
おじさんがあまりに嬉しそうな顔をしているから、つい。
いたずらしたくなって、おじさんのめがねをかけてみる。
あっ、 視界がぼやけて気持ち悪い!
おじさんも怒ってる。
めがねを返すと、今度はおじさん、帽子を見なかったかと聞いてくる。
ほんとにうっかりなんだから。
……何をしているのかと言うと、絵本の中のおじさんとやり取りをしているのです。
このおじさん、すっとんきょうな顔をしているんだけど何だか憎めない。
紳士らしく素敵な恰好をしているんだけど、肝心なところで抜けている。
つまり、とってもチャーミング!
読者とやり取りをしながらこんなに笑っちゃうなんて、ありそうでなかったこの絵本。遠くスウェーデンからやってきたなんて驚いてしまうくらい、その会話のセンスが日本的なのです。日本の子どもたちも、きっと大喜びしながらおじさんに「突っ込み」を入れるのでしょうね。
おっと、わすれてた。
本作は、スウェーデンのすぐれた絵本に贈られるエルサ・ベスコフ賞を受賞されたそうですよ。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
続きを読む