キョロロロロロ
キョロロロロロ
よく晴れた気持ちのいい空の下、山のどこかで響いているのはアカショウビンの鳴く声。ニイーニイ―ニイ―、セミの声も聞こえてきて。
ぼくはウキを見つめて、魚がかかるのを待っている。木の上ではクモが巣をはってトンボがかかるのを待っている。花はハチや蝶を、サンショウウオはアユを、セミは空を飛ぶ日を……待っている。
オオミズナギドリも、シカの子も、じっとそこにとどまって。それはほんの数秒かもしれないし、ずっとなのかもしれないけれど、そこで静かに待っている。だから、わたしだって「待ってみる」。すると降りそそいでくるのは……色んな感触! 音! そして。
何かが起こったような、起こらなかったかもしれない一日。絵本の中にあるのはのんびりゆったり、そんな時間だけ。でも、不思議とピンと張りつめているような緊張感もあり。読み終わってみれば、とても豊かで充実した一日を過ごしたような気持ちになるのです。
村上康成さんの最新作のタイトルは『まっている。』。言われてみて、私たちは改めて気がつきます。自然界ではそんな時間が当たり前なのだということ、そして「待つ」という行為そのものが、生きていくことなのだということに。
ふと周りを見れば、口をあけてどこか一点を見つめている子がいる。ベンチに座ったまま動かない人がいる。嬉しそうに少し笑ってお茶を飲んでいる人がいる。邪魔をしないようにしなくてはね。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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