小さい魔女は、ちょっぴりそそっかしくて、負けずぎらい。年は127歳ですが、魔女の世界では「ひよっこ」で、一人前とは認めてもらえません。魔法もまだ修行中。しょっちゅう失敗していて、しゃべることのできるカラスのアブラクサスもあきれるくらいなのです。
今日はワルプルギスの夜。ブロッケン山に大勢の魔女が集まって、踊り明かすのです。まだ参加は認められていないのに、小さい魔女は踊りの輪にまぎれこみます。しかし、いじわるな魔女に見つかってしまい、皆の前で、1年後には「いい魔女」になっていることを約束するはめになるのですが……。
魔女の世界はなかなかキビしい。大きな魔女たちはしたたかで、一筋縄ではいきません。一方、小さい魔女の魔法の腕前は……読んでいて思わず吹き出してしまうような失敗ばかりで、先が思いやられます。でも大丈夫。小さい魔女にはやってみたいことがいっぱいあるから、いつも前向きなのです。ちょっとドジだけど、けっしてめげない。そんな魔女に親近感を抱いてしまうのは、私だけではないはず!
「いい魔女ってどんな魔女?」というところからスタートした小さい魔女が、四苦八苦しながら成長していく姿は読みごたえたっぷりです。自分の使える魔法で解決してあげられる悩みがたくさんあること、人助けをすることで、自分も喜びが得られるということに、小さい魔女は気づいていくのです。それにしても、小さい魔女が使う魔法のユニークなこと! 紙のお花をいい香りがするお花にしたり、思いのままに風を起こしたり、意外なやり方で意地悪な御者をこらしめたり、ネズミやカメを踊らせたり、かまどに歌をうたわせたり。次はいったいどんな魔法が飛び出すのかな? と楽しみで仕方ありません。
そして最後、理不尽な宣告に対して、小さい魔女が頭を使ってやったこととは……? あっと驚くこと間違いなしです。なんて大胆で痛快なのでしょう。この瞬間、「いい魔女」とか「悪い魔女」とか、人が決めたレッテルを取り去って、小さい魔女は「自分がなりたい自分」になったにちがいありません。わくわくする自分探しのこの物語、男の子にも女の子にもオススメです。
(光森優子 編集者・ライター)
続きを読む