ちいさな体で世界を見たら、見知ったものも見知った場所も、幻想的な光景に!
「たんぽぽの わたげは どこに とんで いくのかな。
みにいきたいな」
ある日そんなふうに考えたのは、ちいさな、ちいさな、女の子のぽぽん。そこでぽぽんは、たんぽぽの綿毛と、どんぐりのぼうしで、ちいさな、ちいさな、空とぶ船を作りました。
「わぁ。すごい!
きっと とおくまで とぶよ」
たんぽぽの船は風にのって、ふわり、ふわり。ところが、綿毛はすぐに風に飛ばされてしまって、船は地面に落ちてしまいます。するとそこに、ぽぽんと同じようにとってもちいさな体の動物たちがあらわれて──。たんぽぽの綿毛をくっつけた船で空を飛ぶという愛らしい世界を、やわらかなタッチで描き出した一冊。
たんぽぽの花に座って、風に吹かれながら絵を描くぽぽん。背の低い草の合間から差し込む光の中を、うさぎについて歩くシーン。ちいさな動物たちが列になり、自分の体ほどもあるたんぽぽの綿毛を運ぶ光景。まるで、おだやかなお昼寝のさなかに見た夢のよう!
特に、空を泳ぐ雲にように空をゆく、綿毛でいっぱいのたんぽぽの船を描いた終盤の絵は、かわいらしくもどこか、神々しくさえ見えます。
無邪気で、あたたかなイマジネーションにあふれた絵のすべて々がみどころ。ワクワクとホッコリが同居する、ちいさな少女のおおきな冒険物語です。
(堀井拓馬 小説家)
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