犬が車から捨てられてしまいます。走り去る車、それを追う犬。犬はずっと車を追います。でも車は見えなくなってしまいます。 犬はにおいをかぎ始め、方向を見定めると歩き始めますが、犬が道路へ出たせいで車同士が衝突し、大事故に。 犬はそれを振り返りながらも、ひたすらに歩き続けます。 あきらめて野をさまよう犬。そして街にたどり着き、ひとりぼっちの子どもと出会うのでした。
字のない絵本です。白黒のデッサン画がこの絵本のすべてです。 ですがそこに登場する犬や景色は何と生き生きとしていることでしょうか! 1本のエンピツでこれだけの世界を描けるのかと唸ってしまう作品です。
ある日、犬は、野の道を疾走する車の窓から投げすてられる。 にわか野良になった犬のその日の長いさすらいをたどって描く。目を吸いよせて離さない50を超える犬の姿態と表情はすぐれたデッサンにより酷いばかりの迫真である。 あるいはひとりに秘めておきたい絵と思い、誰かに見せずにはいられなくなる作品でもある。
鉛筆一本でこんな絵本が描けるなんていいなぁ…
なんて軽く言ったら 娘に叱られました。
仕上がりの1ページの為に何枚のデッサンがあると思ってるの?
(以前 この方を取り上げたテレビ番組を見た事があるんだとか。)
娘曰く 1ページ作るのに
100枚単位での下絵を書いているのだそうです。
言われてみれば…
だからこそ 文章が全くない絵本にも関わらず
犬の気持ちの変動や、あてもなく歩きまわった草原の広さを
深く想像する事ができるのだと思います。
悲しい場面ばかりが続き 後半に入っても
犬を置き去りにした車のことが頭から離れません。
最後の場面で一瞬救われますが
この犬が出会った子どもも一人で旅していたのでしょうか。
そんな子どもの背景を想像すると
これまた哀しい気持ちになりそうですが
この出会いが 1匹と1人の心をあたためることになったのは
一目瞭然のラストです。
ひとりぼっちの寂しさがずっしりと心に響いてくる絵本です。 (西の魔女さん 30代・ママ 女の子15歳、男の子11歳)
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