キャベツくんが道を歩いていると、向こうからやってきたのはブタヤマさん。ブタヤマさんはお腹が空いてフラフラです。キャベツくんが「こんにちは」と挨拶をしても、返ってくる返事は、「フー」。ところがブタヤマさんは、あまりにもお腹が空き過ぎて、次の瞬間にはキャベツくんをつかまえて、こんな事を言うのです。
「キャベツ、おまえをたべる!」
だけど、キャベツくんは慌てません。
「ぼくをたべると、キャベツになるよ!」
すると空には、鼻がキャベツになっているブタヤマさんが浮かんでいます。
「ブキャ!」
これには驚きの声をあげるブタヤマさんでしたが……。
長新太さんの不思議な世界が存分に楽しめるこの絵本。だけど難しいことは何もありません。ひたすらキャベツを食べたいブタヤマさんと、驚かせ続けながらも少しだけ同情してしまう人が好いキャベツくんの、愉快なやり取りの繰り返しなのです。ブタヤマさんが「ブキャ!」と言うたびに、笑ってしまえばいいのです。(だって面白いんだもん)
地平線まで見えるような地面に、黄色く広がる大きな空。遠くには山々が連なって。そこから一本の道がずーーっと伸びていて……。なんでしょうね、この解放感。ここにいるだけで、心が晴れてくるようです。そんな道の向こうからやってくるのは、小さな可愛い「キャベツくん」。ああ、ブタヤマさんじゃなくたって、私だってきっと話かけてしまうはず。「こうなる!」と言って、体の一部がキャベツになっている変な動物を次々に見せてもらいたい。
そんな風に彼に夢中になってしまった皆さまがた。ご安心ください、キャベツくんはシリーズ全5冊。この摩訶不思議な世界がどんどん続いていきますよ!覚悟してくださいね。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
続きを読む