その絵本の頁を開くとき、指が震えました。このほど復刊が確定した「はせがわくんきらいや」を手にした時です。墨で流れるような強烈な個性的なタッチの絵。そして乱暴でぶっきらぼうな子供たちのセリフの底のまた底に流れる、森永砒素ミルク中毒の患者である主人公のはせがわ君という少年へのいたわりの気持ち。久々に手に取って読みながら、私は心の中で涙を流していました。76年の第3回創作えほん新人賞で、創作絵本の世界に強烈なメッセージ性を携えて登場した本書は、多くの衝撃を読者の与えました。しかし、この本は、刊行した出版社が何度も倒産したことによって、数度の絶版という不遇をかこって、読者の手から失われておりました。今度こそ、この素晴らしい絵本を絶やすことなく、世に伝えたいと心から思います。
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