心地よい土の中にずっといたいと思う球根に、もぐらが「春なんだから、芽を出してごらん」と言います。「でも……ぼく……このままでいい……」。知らない世界がこわくて、勇気の出ない球根ですが、おひさまにあたためられて、うとうとしている間に、うっかり土の上に芽を出してしまい……。
知らない世界へとびこむのは、とっても勇気がいること。でも、一歩踏み出せば、そこには素敵な世界が待っている――。
今、勇気を出すことをためらっている人にぜひ読んでもらいたい作品です。
<ここがポイント>
・ 成長することの素晴らしさを伝えます
・ 春らしい、美しい色彩です
・ 勇気を出すことの大切さを伝えます
<おうちの方へ>
大きくなるって、こわいこと?
教育評論家・尾木 直樹
未知の世界に飛び出すのって、だれでも勇気がいるもの。
それも、自分の体がどんどん変わっていったら……?
「成長へのおそれ」は、だれもが経験するものです。
大きくなるって、こわいこと?
それとも、すばらしいこと?
わくわく、ドキドキしながらも、一方では、自分の知らない世界に足を踏み入れるこわさから、「このままでいいのに」としり込みしたくなります。現状に不満はないのだから……。
でも、球根は、自分の変化にとまどいながらも、少しずつ成長していきます。球根が不安になるたびに、だれかが声をかけてくれます。
“心配しなくても大丈夫だよ”と勇気づけてくれた、もぐらやたんぽぽ。かれらは、自らも成長を経験してきた、土の上の世界を知る「先輩」です。春の雨も、やさしくチューリップを励まします。そして、いつも抱きしめて、あたため続けてくれたおひさまの存在は、球根にとって、エネルギーの源。なくてはならない愛そのものでした。
こうして、ついに開花したチューリップを大歓迎したのは、蝶やてんとうむし、野原の友だちです。人に喜びを与えることができた――この、今まで経験したことのない気持ちは、それまで自分の成長におっかなびっくりだったチューリップの背中を、グーンと後押しします。そうやって、自信を持って伸び伸びと咲くチューリップの輝きのまぶしさに、仲間はどんどん集まり、増えていきます。
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