目には見えないけれど、「くうき」はそこにある。だれかれのへだてなく、まったく普通に、気づかせもせずに、そこにいてくれる。
ぼくの胸にあった「くうき」は、ママの中にいたもので、今度はパパの胸の中にはいっていく。同じ家に、同じ国に、いや同じ地球に住んでいれば、いつか全ての生き物の胸の中を「くうき」がゆきわたり、あらゆるものをつないで流れていく……。
詩人まど・みちおさんの詩をもとに誕生したこの絵本。いつでもそこにあるけれど、普段はその存在を気にすることもない「くうき」。それを絵として表現しているのは画家ささめやゆきさん。つかみどころのない言葉のようで、でも、地球上に存在する私たちを確かにつなげてくれているのは「くうき」なのだということが、しっかりと伝わってきます。
自分の隣にいる人を、どこかにいる知らない誰かを、地球上の全ての生き物を、そして今はもういないあの人のことを。この絵本を読むことで、不思議といつでも思い返してしまうのです。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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