文学界において疑うもののないエンターテイメントの名手、宮部みゆきがまさかの絵本!? しかもホラー・・・・・・。
この よのなかの
悪いことを
この よのなかで
いちばんよく しっています
「悪い本」はそう自己紹介します。
あいつなんて、いなくなってしまえばいいのに。
あの子なんか、消えてしまえばいいのに。
そんな悪い気持ちに応えるために、「悪い本」はそこにあるのです。
「模倣犯」や「理由」などで知られる小説家・宮部みゆきさんが描く怪談絵本は、怪談というよりテイストはダークファンタジー。
この世の悪を知りつくすという「悪い本」の語る言葉にどこか幼さを残しているところが、「悪い本を」いっそう邪悪なものに感じさせます。
そんな「悪い本」の不吉なひとり語りを、じっとりと冷たい不気味さで飾るのが吉田尚令。
小説家・森絵都さんの「希望の牧場」や板橋雅弘さんの「パパのしごとはわるものです」などで挿し絵を担当する吉田尚令さんですが、本来はかわいらしいはずの人形を、その造形はそのままによくもこうまで不気味に描けたものだと背筋が寒くなります。
怖いものが特別好きだ!というたくましいお子さんでないと、ひょっとして刺激の強い恐怖体験になるかもしれません・・・・・・。
ああ、そうそう、「悪い本」となかよくなると、大切なことを教えてくれるそうです。
それは、
「この よのなかで いちばん 悪いこと」
だそうで・・・・・・
(堀井拓馬 小説家)
続きを読む