インドのマガダ王国ラージギル(王舎城)の宮廷にいた白いゾウの話です。インドでは部族国家の時代、小国が分立していました。ゾウはインド人にとって、交通の移動手段として、農耕の友として、一番身近な生き物でした。その中でも、白いゾウはゾウの王として大切にされていました。マガダ国の王はゾウばかりが注目されることに嫉妬心を抱き、ついにゾウを殺そうと考えました。そのとき、ゾウは空を歩きながら次のようなうたを唱え、王舎城を去っていきました。「愚かな者は せっかくの 自己の名声 生かせずに かえってそれで 不利益の うずに巻き込む 他人まで」。そしてゾウはベナレスの王宮で迎えられ、幸せに過ごしました。仏教では幸せになるには(さとりにいたるには)苦しみをなくすことだといいます。苦しみをなくすにはその根源を断つこと、それは「煩悩」です。煩悩を断つことにより人は幸せになれます。嫉妬心も煩悩のひとつです。この物語はそんな嫉妬心を捨て、それぞれを認め合っていくことを勧めています。この絵本を通じて子どもたちに、人をうらやむことをやめて、互いに認め合って生きていくことを伝えていただきたいと思っています。
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