「おにいちゃん まってー!ぼくも むしとり つれてって!」
お兄ちゃんは、虫とりの天才。お兄ちゃんといると不思議。
いつも通る道なのに、小さな小さなしげみなのに・・・だんだん虫がいっぱい見えてくる!
大人気絵本作家はたこうしろうさんの新作は、こんな風に男の子の兄弟が帽子をかぶって、大きな網を持って、虫取りに出発するところから始まります。夏、日差し、少年。今度はどんなドラマティックな展開が待っているのかと期待で胸はふくらみます。
だけど驚くのは、ちょっと離れた森のような公園に着く前に、いくらでも昆虫が見つかってしまうということ。イタドリの葉っぱを見てみれば、鮮やかな模様のイタドリハムシ。ノブドウの葉っぱがかじられていれば、裏には沢山のアカガネサルムシ!枝の先を網に入れてガサガザゆらせば・・・見たことのない形をした小さな虫がいっぱい。
見たことがないっていうより、ちゃんと見たことがなかったって言う方が正しいのかな。
とにかくお兄ちゃんがすごいのは、どこにどんな虫がいるかってことをちゃんと知っていること。
切った木に集まってくるのは?石をひっくり返せば?静かな公園の池の水の上には・・・?
楽しくワイワイ騒いでいるようだけど、ページをめくるたび、次から次へと広がっていくのは、お兄ちゃんとぼくの結構「本気」の世界。
それもそのはず。「ぼく」のモデルは小さい頃のはた少年。実際に、夏休みになると毎日虫取りに出かけていくお兄ちゃんの影響で、はたさん自身も虫とりに本気で夢中になっていったのだそう。
それは大人になって、絵本作家となった今も変わらず。
満を持して発表されたはたさんの「虫の絵本」。
「虫とりの楽しさを伝えたい!」「カブトムシやクワガタだけじゃない、身の回りにはこんなにも沢山の昆虫がいるんだ」
そんな熱い思いが伝わってきて、今すぐにでも外に飛び出していきたくなってしまう1冊となりました。
これを読めば、今年の夏はちょっとちがった景色が見えてくるかもしれませんね。
(磯崎園子 絵本ナビ編集長)
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