スーパーマーケットの前で、トマトの苗を見つけたハナちゃん。
ちゃんと世話をする約束をしてパパに買ってもらいます。
夏休み、田舎のおばあちゃんのところへ行くときも、苗の大きな鉢を大事に抱えていくハナちゃん。
着くと、おばあちゃんは早速、苗を畑に植えかえてくれました。
苗はどんどんのびて、ちっちゃな緑のトマト(ミニトマトの苗でした!)がたくさんなりはじめ・・・赤くなるのをハナちゃんが楽しみにしていたある日、台風がやってきました。
夜、雨と風の音を寝床で聞きながらトマトを心配するハナちゃんですが・・・。
台風の翌朝、竹のくいにつかまりトマトを仰ぎ見るようにハナちゃんが話しかける絵。
そして真っ赤になったトマトをうっとりかじる可愛い横顔。
昔ながらの白い割烹着にほっかむり姿のおばあちゃんが頼もしく、ゴザの上に広げられた真夏の野菜や草花の絵など、見どころはとても書ききれません。
パリに移住して絵を描く市川里美さんがこんな絵本を描かれたことにちょっと驚きます。
でも同時に、本から匂い立つ「夏の畑」のかがやきに心が幸せでいっぱいになるのです。
もみじの葉っぱを箸置きに。トマトの飾り切りのそばに菊の花。食卓につゆ草や銀杏の葉をあしらって。
おばあちゃんとハナちゃんが腕をふるったお膳の絵にもそそられますよ。
『青い鳥』じゃないけれど、大事なものはすぐそばに。
トマトを育てたハナちゃんと一緒にみずみずしい夏のいのちを感じられる一冊です。
(大和田佳世 絵本ナビライター)
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