貧しいけれど絵の上手な少年に、仙人が魔法の絵筆をくれます。描いたものが本物になる絵筆……と、ここまでは、いかにもありそうな話なのですが、そこからの冒険活劇が爽快です。「困った人のために使いなさい」という仙人の言葉どおり、マーリャンは権力者から身をかわし、あるいはこらしめます。しかも、普段は絵筆の力を隠して生活しているというのがカッコいい。仙人が絵筆をくれたのは、マーリャンの才能を見込んだからではなく、弱きを助け、強きをくじく意志を見込んだからなのですね。だれだって自分の得意なものを生かして、正義をまっとうすることができる! まるで現代のヒーローものを彷彿とさせる物語ですが、絵が古い古い中国画風なのが面白いです。親しみやすい画風の絵本が多い中、ありきたりでない絵本は重要だと思います。