創作落語やテレビなどでお馴染みの桂三枝師匠が送る落語絵本。
現代の大阪の片隅で生き抜く野良犬の、仁義なき戦いを描く。
まんだらの安がブラックの親分に敵を討って欲しいと、話を持ち込む。それを実行しようとすると意外な顛末に…笑って笑って泣いて、どんでん返しのサゲが見事な師匠の落語を思わせる、素敵な絵本。
やや大人向けかも。
野良犬を人間に見立てて書いているが、これは人間そのものの話だと思う。一人の身勝手な行為によって、相手の人や関係者各位が大いに傷つき、迷惑していく様子や、結局非力な者にはどうすることもできない虚しさなどが感じられて哀しい。誰もが幸せになりたいとは思っている。ただ、自分だけ幸せになるのか、関係者が全員幸せになる方法を模索していくのかの違いは大きい。
野良犬が捕獲され、殺処分されていく現実を思うと、この話は身に染みる。これが自分の立場だったらどうだろうか。この絵本に出てくる大人の野良犬たちのように、覚悟を決めて過去を捨てて生きて行けるか?人間性を試されている気がした。