私もくまのとんとんのように、学生時代はずっと吹奏楽やバンドで「たいこ」をたたいていました。
さるのさりーが「バンドって なあに?」ととんとんに尋ねると、「みんなで いっしょに おんがくをやることさ。」ととんとんは答えました。
実は、この「みんなで いっしょに」がなかなか難しいのです。一人一人がたくさん練習することはもちろん、バンドで他のメンバーの音を聴きながら、バラバラだった音を一つの音楽に仕上げていくことがとても難しいのです。
仲間の演奏に意見を言ったり、演奏全体をどのようにしていきたいのかアイデアを出しあったりしながら曲を作りあげていきます。その過程でケンカすることもあるでしょう。だからこそ「みんなで いっしょに」演奏ができたときの達成感や、演奏をしているときに背中がゾクゾクする感じは、とても大きな悦びになります。
とんとんバンドの演奏を聴いて、自然に歌ができてしまったのねずみのちーや、森じゅうから集まってきた動物たちが踊りだしてしまう、そんな風に音楽の悦びをみんなと共有できる演奏ができるとんとんバンドは、きっととても素敵なバンドなんだろうと思います。
湯沢香樹実さんの楽しい文章と堀川理万子さんの素朴な絵で作られたこの絵本を、子どもたちはバンドって楽しそうだなあと思ってくれるに違いありません。森の遠くから、音楽を楽しむ動物たちを描いた最後のページは、きっと今日も演奏しているのだろうと思うほど、とても印象的でした。