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ヨンイのビニールがさ」 パパの声

ヨンイのビニールがさ 作:ユン・ドンジェ
絵:キム・ジェホン
訳:ピョン・キジャ
出版社:岩崎書店 岩崎書店の特集ページがあります!
税込価格:\1,430
発行日:2006年05月
ISBN:9784265068142
評価スコア 4.6
評価ランキング 4,235
みんなの声 総数 19
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  • この本は、物語を書いた人や絵を描いた人の名前でわかるように、韓国の絵本です。
     まだ暮らしぶりがそれほど豊かではなかった、もちろん今はたいそう豊かになりましたが、1980年の初めに書かれました。
     だから、ビニールがさといっても、どことなくごわごわしていますし、柄の部分も木でできています。おしゃれだとか便利だということでなく、むしろ布製の傘が買えない貧しい人たちが使っていました。
     あるいは、道も舗装がされていません。ですから、雨が降ると、水たまりができ、やがて泥んこになってしまいます。そんな時代のお話です。
     それは韓国という別の国だからではありません。私たちのこの国でも、何十年前はそうでした。そのことを忘れてはいけません。

     主人公の名前はヨンイ。小学生の女の子。見た感じでいえば、二、三年生ぐらいの、かわいい女の子です。
     月曜の朝だというのにあいにくの雨。ヨンイは緑のビニールがさをさして学校にむかいます。そして、途中で雨にぬれている物乞いのおじいさんをみかけます。
     物乞いというのも知らない人がいるかもしれません。人に慈悲を乞うとでもいえばいいのでしょうか。でも、この絵本でも描かれているように、子どもたちにもこづかれたり、からかわれたりしてしまいます。昔なら「勉強しないと、ああいう人になりますよ」と言われてしまいます。
     そんなおじいさんをヨンイはどのようにみていたのか、ビニールがさをさした後ろ姿の彼女しか絵本の中では描かれていません。
     でも、ヨンイの気持ちはよくわかります。どんどん降る雨が、そしてしだいにぬかるんでいく土の色が、ヨンイの、悲しい気持ちをよく表現しています。

     ヨンイはそっと学校を抜け出し、「だれかに みられていないか あたりを よーく みまわしてから」おじいさんに彼女のビニールのかさをさしかけてあげます。そして、濡れながら学校に走ってもどるのです。
     どうして、ヨンイは「だれかに みられていないか」様子をうかがったのでしょう。さりげない文章ですが、ヨンイのやさしさと小さな勇気が伝わってきます。

     学校が終わる頃には雨もあがりました。もうおじいさんはいませんでした。ヨンイのビニールがさがたたまれて、壁にたてかけてありました。
     かさは何にもいいませんが、おじいさんの心がやさしいヨンイに話しかけているようです。「ありがとう」って。
     きっとほかの子どもたちには、そのビニールがさの意味がわからなかったと思います。わかったのはヨンイひとり。それでいいのです。
     雨のやんだ道をかさをひろげて帰る、ヨンイの後ろ姿の、なんと晴れやかなことでしょう。

     豊かになることで忘れてきたことがこの絵本にはあります。
     それがわかるのは私たちおとなでしょうし、それをきちんと伝えていくのも、私たちおとななのです。

    投稿日:2020/12/26

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  • 言葉少なでありながら、何と能弁な絵本でしょう。
    情景だけが描かれているのに、何と饒舌な絵本なのでしょう。
    雨の日に少女ヨンイが学校に登校するためにさした傘は、穴の開いた緑のビニール傘。
    他の傘と比べると、貧しさを象徴しているようです。
    校門の近くの路上で、雨に打たれながら寝ている物乞いのおじいさん。
    傍らには、施し受けにと置かれたバケツから、たまった雨水があふれ出ています。
    忌み嫌われ、馬鹿にされている物乞いのおじいさんが、雨に打たれていることが気になってしようのないヨンイ。
    ヨンイの思いとやさしさが見事に描かれています。
    絵本の中で、ヨンイの表情が読み取れるのは一つの絵だけ。
    あとは、横顔だったり、足元だったり、後ろ姿だったり、雨に濡れた地面に映る傘の緑だったり。
    それでいて、ヨンイの存在感と表情が溢れているのが不思議です。

    雨上がり、ビニール傘だけが残されて、おじいさんはいなくなっていました。
    おじいさんはどこに行ったのか、おじいさんは傘を差しだされたことをどう思ったのか、それは不明です。
    でも、そんなことはどうでもよいのでしょう。
    ヨンイの気持ちは充分に満たされたようです。

    心憎いまでに奥の深い絵本でした。

    投稿日:2012/07/04

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