誰もが知っている『風の又三郎』ですが、文字だけで読もうとすると言葉づかいと用語の壁が意外と厚くて、イメージとしてはとらえきれずにいた作品でした。
今回、田原田鶴子さんの絵をもって、とても爽やかな、本当に風のようなお話だと感じました。
教室が一つで全学年を収容している山の分校に転校してきた風のような少年。
地元の言い伝えで「風の又三郎」と言われた少年が、田原さんの絵でとてものびのびと描かれ、短期間の少年たちの交流と心のふれあいがよく理解できました。
私自身が三か月だけで小学校を転校した経験がありますが、短いだけにとてもきらめきのある生活でした。
転校生は異星人であり、別世界の人間なのです。
そんな三郎を自然界が包みます。
地元の少年たちも自然児です。
本当に短期間の台風のような交流が、爽やかで明るい風景の中で展開されます。
『風の又三郎』をとてもわかりやすくしたこの絵本。
今までレビューがないのが不思議な一冊でした。