おばけのどろんどろんが、夏の夜に小川のほとりで出会った大勢の蛍たち。おばけなのに光るおばけに囲まれたと思って、怖がって泣いているどろんどろん。ちょっと笑えるところ。
全体的に、素朴なタッチの温かみのある絵と、繊細な心の描写が優しい雰囲気を感じられる素敵な絵本。でも、ところどころに生き物の儚さや、生きるためには食べる必要があるという現実、楽しい思いができることが奇跡であることなど、深いテーマが潜んでいるように思われた。
蛍は成虫になってから2週間くらいの寿命だという。短い期間、精一杯光って、恋をして、遊んで、子孫を残して、思い残しがないように死んでいく。一方、おばけの方は、既に死んでいるので、「残り時間」を気にすることなく、半永久的にだらだらと存在しているようだ。
両者の生き方や「残り時間」が対照的だ。
蛍はどんどん生まれて、ハラハラドキドキしながら一生を過ごしていく。「わたしたち、いまが いちばん たのしい ときなのよ。」という蛍の台詞が深い。自分の一生をすべて把握して、受け入れている。
おばけは成仏できないだけあって、迷っているのか、ぼーっとしている。そんな違いがあっても二人は仲良く遊んで、協力して危機を乗り切っていく。こういう風に、人間関係も、人間と自然との関係も、うまいこと折り合いをつけて、仲良くやっていけないものかと、思う。
この絵本を読んだ後、少し時間がたってから、そんなことをふと思った。いろいろ考えさせられる場面が多く、個人的には哲学できる絵本のような気がする。長く読み継がれている絵本は、なにか、読者の心に残るものがあるようだ。
年齢問わず、一度見てもらいたい作品。