繊細な描画は奥行き感があり、見る者を想像の世界へ引き込みます。
小さな子供向けのお話というと元気で楽しく愉快な!というものが多い気がしますが、このお話の根底にあるものは単に「ライオンとバス運転手のおじさんが仲良しになれた、よかったね」ということではなくてもう少し奥の深いものです。
不機嫌なライオンのその理由を案じ、叱るでもなく誰かのせいにするでもなく、ただ自分ができる事をしてあげる。そういう押し付けの無いやさしさ。
そして苛立つライオンの心が穏やかになり、気持ちが通じ合った時にいっしょに夢を見て幸福感を共有する・・・夢の中で二人は草原を自由に走り回る爽快な気持ちを共有するのです。
(言い換えればそこでライオンの不機嫌の理由を身を持って知ることになります)
いっしょに見た夢は二人にとってかけがえの無い思い出となります。
しかし、しばらくすると運転手のおじさんは・・・
今このような時代だからこそ気づいてほしい押し付けの無いやさしさ、さみしさの共有、心が通じ合ってゆく過程。
小さい子供のうちにこそ、そういう思いやりの気持ちの芽を育みたい。
大人になってから読み返したときにまた別の所へ滲みてゆくような、そんなおはなしです。