阪神大震災のお話。
あのショッキングな災害。
生きたまま死んでいくという、火災や土砂に人生を閉ざされた人々の地獄。
あの阪神大震災を知らない世代の中で、とても貴重な絵本だと思います。
助かる助からないはまさに運命としか言いようのない紙一重のことだったのです。
風邪で小学校を休んでいたゆずちゃんがやっと登校する日の朝に起こったあの大震災。
たいちくんは助かり、ゆずちゃんは死んでしまった。
風船で世界を埋め尽くしたいと願ったゆずちゃんの思いを、みんなで共感してゆずちゃんの冥福を祈ります。
たいちくんのゆずちゃんへの思いもまた風船のようです。
あれだけの大災害で、たいちくんの小学校がすぐに再開できたとは思えません。
ゆずちゃんだけが犠牲になったとも思えません。
しかし、あまり悲惨なことばかりを強調しても意味はないでしょう。
災害は、戦争とちがって過ちではないのですから。
この絵本から哀しさと優しさを感じ取ってもらえたら、ゆずちゃんの冥福を一緒に祈ってもらえたら、それだけで充分だと感じました。