落語絵本シリーズのなかでもこれは成功の1冊といえる。
大人から子どもまで、寿限無は多分日本中で一番有名な落語だろう。これは言葉遊びの本なのだ。意味はチンプンカンプンでも何とも心地よいリズムで口ずさめる。しかもありがたいことに江戸情緒の絵がついている。頭の柔らかい子どもたちはわけなく丸ごと覚えてしまうだろうが、大人は名前の由来を絵ときしてもらうことで興味が増し、理解が進む。できれは落語家の口調を思い出しながら読めば更にたのしめる。
途中で子どもたちが「寿限無寿限無…」と長い名前を唱えながら赤ん坊をあやす場面では「いない いない いない…」でしばらく止めてからページをめくって「ばあ…(間)…あらっ ねてる」と続けると面白い。
ところで…寄席では寿限無は前座の演目であり、真打ちはやらないのだという。歌舞伎の「外郎売」のように活舌のトレーニング用なのだろうか。でも、それはまた別な話…