この絵本と出会う数日前のこと。
人は何故死ぬの?どうしても死んじゃうの?と、息子が真剣に尋ねてきた。
…とうとう来たか。
生まれて7年しか経っていない甘ったれに果たして受け止めきれるだろうか。
ところが、命を教える絶好の機会が訪れたというのに
親として返してあげられる答えを用意していないではないか。
なんとも情けない。
幾日か過ぎたある日、偶然引き寄せられるようにこの絵本を手に取った。
1000年も前からずっと草原を眺めているイチジクの木の下で
その裁判は始まった。
訴えられたのはヌーをころした母ライオン。
裁判が進むにつれ、意外な自然の仕組みが明らかになっていく。
証言する動物が、一頭ずつまっすぐ絵本のこちら側に向かって語りかけること、
また、証人の一人として人間が登場することによって
この問題は決して遠い国の物語ではなく、
「自分自身をも含んだ自然の掟」なのだと知らされる。
野生動物の専門家である竹田津さんと
長年動物園で命と向き合ってきたあべさんの描き出す
厳しく優しく、壮大な命の輪。
姿勢を正して何度も読み返す息子が
死に対する恐怖に押しつぶされず、
希望につながる感情を得てくれれば嬉しい。