まず表紙から惹かれます。文字はなく、赤い本を抱えた女の子が表紙右下コーナーを歩き去ろうとしています。黄色のマフラー、赤い帽子が暖かそうです。裏表紙には同じく右下コーナーに半そでの男の子が赤い本を読んでいる姿が描かれています。二人はこの絵本の主人公。この「赤い本」の中で出会うのです。
表紙同様、「赤い本」は文字のない絵本です。雪の降る都市に住んでいる女の子と南国の島に住んでいる男の子が、赤い本を拾い、ページを開くところから物語は始まります。
空間がいくつにも広がる絵本なので、読んでいる側はどんどん奥に入り込めます。その感覚は少々入り込んでいで息子は「ちょっとわからない…」ともらしていましたが、そう感じても不思議ではありません。最後に赤い絵本は別の男の子に拾われるのですが、その子は女の子のクラスメイト。ちゃんと作品中に登場している男の子でした。
真っ赤な表紙のイメージと描かれている温かさがバレンタインにぴったりかなと思い、息子には今年、この絵本をプレゼントしました。ちょうどカルデコット賞オナーを受賞した直後で、受賞後の絵本には名誉のスティッカー(シール)が貼られてしまうことから、シールなしの絵本を探すのに奔走しました。(せっかくの「赤い本」なので、表紙はこのまま、シールなし、何も邪魔されない作品のままがいいと思ったからです。)子どもも大人も、何度も何度も開きたくなってしまう不思議な絵本です。この「赤」が作中でもすごく印象に残るのですね。赤い本を通した出会いがずっと続いているのかと思うと、またすごく不思議な感覚にとらわれます。