作者はエジプト学者で、「デモティック」という象形文字の
草書体のような書体でパピルスの巻物に書かれた話を訳し、再話した、
とのことです。
書記神トトが、女神テフネトを説得するために話した寓話が、
この「ライオンとねずみ」だったという訳です。
「ライオンとねずみ」といえば、イソップの再話が有名ですが、
それよりも詳しいエピソードが語られています。
ライオンは出会った動物たちから、人間の悪行の数々を聞き、
人間に仕返ししてやろうと思うのです。
その後、ライオンはねずみに会い、踏み潰そうとしますが、
ねずみの提案を聞き、逃がしてやるのです。
そして、その提案どおり、ねずみは鮮やかにライオンの窮地を救うのです。
古代エジプト版では、人間自身の動物への仕打ちに対する反省の念がより多く投影されているようですね。
絵も、古代エジプトの絵を基にした、ということもあって、
その時代を体感できるような気がします。
本の見返しには、原本となる部分のデモティック文書が採録されています。
このリアリティも嬉しいですね。
少し長い文章ですが、子どもたちにはぜひ読んでほしいです。