最近空を見上げたこと、ありますか。
ひと頃「定年後」という言葉がとても気になって、実際自身がその「定年後」になってみると、空をよく見上げていることに気がつきました。
仕事をしている時は、通勤時の満員電車の人の肩とか空を隠すようなビル群とか地下街やビルの中ばかりで、空はそこにあったはずなのに、見上げることは少なかった。
そんな生活から解放されて、あ、今日は空がきれいとか雲が出てきたなとか雨近いなとか、空の下で息をしていることを実感します。
詩人の長田弘さんが空のことについて書いた文は、「あっ 雨」から始まります。
雨が次第に強くなってきて、空の色が、それは世界の色でもあります、青から灰色に変わっていきます。
風も強くなり、雷鳴がとどろきます。
と、そこで長田さんは「運命/みたいに たたきつけ」と、「運命」という固い言葉で綴ります。
やがて、雨がやみ、空は明るさを取り戻していきます。
だんだん日が暮れていき、夜になります。
空は星でいっぱいになります。
まるで私たちの人生そのもののような、空の姿です。
荒井良二さんの絵がとてもよくて、絵本ですから音はないのですが、絵を見ていくとどんどん音楽が流れてくるようです。
きっと音楽好きな人なら、あの曲が聴こえてくるようというでしょうが。
ページを閉じたら、そっと空を見上げて下さい。
どんな空ですか。