「サンタ・クロースからの手紙」 みんなの声

『指輪物語』の作者、トールキンが「サンタ・クロース」になりとおして自分の子ども達に宛てた手紙を、三男の夫人が編集した本です。

手紙からは、サンタ・クロースと同居人の白熊の日常がうかがえ、年を経るごとに登場人物が増え（エルフ、ゴブリン、洞窟熊などなど）、一大物語を読んでいるようです。次の年には北極でどんな事件が起るのか、ドキドキ、ワクワクします。
毎年、こんな手紙を受け取れたなんて、トールキン先生の子どもたちは幸せだなぁと思いました。

手紙には、トールキン直筆の絵もふんだんに同封されているのですが、これがとても魅力的です。

クリスマスの時期に、小さな子ども達に読む本としてはもちろん、『指輪物語』の世界が好きな、大きな子どもや大人にも、とても嬉しい一冊だと思います。

この絵本は、自分が小さいころに親から贈られました。
が、そのときに「この絵本の良さは大人にならないとわからないだろうな」といわれ、
そして本当にそのときはあまり面白く感じませんでした。

そして今、自分が大人になって小さな男の子の母にもなり・・
再びこの絵本を読みました。
すると・・・じわじわ、しみじみ・・本当に感動ありユーモアあり
まるで暖炉の前にたたずんでいるかのように心温まる傑作なのでした。

その感動は、作者トールキンの父としての子への愛情（毎年の、ステキに凝った手紙）だったり、
そこに創り出されたサンタクロースの暮らす世界と生き生きした登場人物だったり・・
はたまた、サンタの相棒、白熊くんのドジで愛嬌あるキャラクターに
ぷぷっと笑わされたり・・。

どこまでも細かい演出（封筒や切手のデザイン、形象文字）は
ファンタジー作家トールキンの真骨頂でしょう・・。

昨年のクリスマスには、この真似をし「サンタからの手紙」を
描きました。２歳の息子に・・。
彼にはまだわかりませんが、数年後の成長した彼に、手紙の束を
見せたいと思っています。

想像力をもつこと
親から子へのきもち

そんな普遍的なだいじなものが、ぎゅっと詰まっています。

トールキンといえば「指輪物語」「ホビットの冒険」とファンタジーの巨匠というイメージ。この絵本は物語なのかと思ったら、

トールキン自身が４人の子どもたちのために、サンタ・クロースになりきって書いた手紙だということがわかり驚きました。

文字が小さいのが残念ですが、長い年月にわたる手紙の数々、そのどれもが短編を読むような味わいがあり、子どものために文字を考え水彩画をほどこすという念の入れよう。

こんな手紙をもらった子どもたちは幸せだったでしょうね。この絵本によって私たちもその幸せのお裾分けをいただくことができて幸せです。

最後の手紙は戦争という時代背景もうかがえ胸がつまります。サンタ・クロースに手紙を送ることはあっても、サンタ・クロースから手紙をもらうというのは特別なこと。その特別なことを続けていたトールキンには、親として頭が下がる思いです。

「指輪物語」「ホビットの冒険」だけでない、トールキンの一面を知る上でも貴重な一冊だと思います。