クリスマスの絵本はたくさんありすぎて困ってしまう。
ましてやあの佐野洋子さんもクリスマスの絵本を描いていたなんて知らなかった。
でも、さすがに佐野さんだけあって、かわいい、美しい、胸キュンの絵本とは少し違う。
物語の舞台は山のふもとの雑木林のなか。
一本のもみの木が主人公。
その隣で大きな年とった木が「木はしっかり根を広げて倒れるまでそこにいるもの」と教えるのだが、もみの木はきれいな町でクリスマスツリーになることばかり夢みていた。
だから小鳥やリスがいくら言っても話をきかない。
町に行く貨物列車を見つけては何を載せているのか気になって仕方がない。
そしてある日、ついにたくさんのもみの木を運ぶ貨物列車を見つけて、もみの木は自ら根っこひっぱって、貨物列車のあとを追いかけた。
クリスマスツリーになることを夢みて。
でも、もみの木をおいて列車は行ってしまったあとだった。
泣きながら雑木林に帰るもみの木に、白い雪が降ってきて、もみの木は白い化粧をほどこしたようになる。
そんなもみの木を森の仲間たちは暖かく迎えてくれる。
そして、もみの木がなりたかったように、きれいな飾りつけをしてあげた森の仲間たちは「きみはすばらしいクリスマスツリーだ」と言ってあげた。
本当にこれでいいのだろうか。
こんなわがままなもみの木を森の仲間たちは簡単に許していいのだろうか。
最後にもみの木が「わたし、クリスマスツリーになるためにうまれてきたの」と言うのだが、佐野さんは「小さな声でいった」と書いた。
佐野さんの気持ちがなんだかわかったような気がした。