タイトルから時間旅行のお話だということが想像できますが、SFではありません。
たまたま「タイムチケット」ひろったマサオは、いろいろな人に出会い、さまざまな体験をします。
そのなかでマサオの記憶にずっとのこるであろうことは、自分の年齢と同じくらいのお父さんに出会ったことでしょう。
お父さんが子どもの頃好きだったもの、苦手だったこと、獣医になるきっかけとなったこと、そういうことを、マサオは子どもの頃のお父さんと一緒に体験し、知っていくのです。
きっと普段の生活では、知りえなかったのではないかと思います。なんだ、お父さんだって、自分と同じだったんじゃないかと。
そういう姿を子どもが知ることは、実はとても大切なことではないかと思います。そうか、みんな似たような経験をしているんだな、失敗もしているんだな、苦手なものがあるんだな。それだけで、子どもの心は安定し希望がもてるようになるのではないでしょうか。
だから、タイムチケットがなくても、大人は子どもに、自分が子どもの頃の話をしてやるが良いと思います。それもなるべく失敗談などを。
昔の世界で、剣道の先生が四十前後の初心者のおじさんに「やりたいと思ったときにはじめるのが、いちばんです。それがたとえ何歳でもあっても、遅いということはないでしょう」と話を聞く。そして四十年続けて上達した初心者のおじさんに遭遇する。そんな実例を見せられると、ヨシッと気合が入ってくるのではないでしょうか。