人形、雛人形には女の子特有の気持ちや思い出が宿っているように思います。
雛人形のお話として私がまず思いつくのは梨木香歩さんの「りかさん」ですが、人形が話す場面があるのが共通しています。
かりんの家には、犬の雛人形しかありませんでした。海外赴任や転勤が多かったことも関係しているのです。
あとがきを読むと、作者のなかがわちひろさんも子どもの頃、雛人形がなかったということでした。
私自身は、ガラスのケースに入った木目込み人形の小さな雛人形でした。
一応十五人揃っていたものの、友だちの家の豪華な段飾りがうらやましいなと思ったこともありました。
このお話を読むと、それぞれの年代で雛人形にまつわる自分の思い出も去来してくるように思います。
かりんの家に、ひいおばあちゃんの雛人形がやってきます。
友だち同士で雛人形をくらべっこして、それぞれの女の子たちが思う嫉妬心や思いも描かれていて、そういう気持ちも当然あるだろうと思いました。
魂の存在や雛人形の持つ意味、そして何より子どもたちが健やかに育つようにという祈りがこめられていること、愛されていること、そのことは子どもたちに伝わってほしいことだと思います。
読んだ後、自分のお雛様に対して一層愛着がわいてくると思いますよ。