様々な児童文学HPを見て回りましたが、この物語が紹介されている所が見当たらないのが不思議です。
いい年こいた(当時28歳今ヒミツ)本好きが、童話に初めて手を出したのがこの本でした。おかげで困ったことになっています。
『木を植えた男』の物語とは、フランスの荒野が舞台の、人が人であること、人が成しうる行為に限界が無いことを、普通の言葉で著した傑作です。
当時少し話題になっていたこの物語は、私はまあ読んでやろう位の軽い気持ちで手に取ったのですが、そのあまりの深さに呆然としてしまいました。
魔法も無く、冒険も無い物語の中、ただ木を植えて行く男の姿に次第に引き込まれていき、読後には動くことも言葉を発することさえ出来ませんでした。
「縁の下の力持ち」?これが陳腐な言葉でしかないと理解した瞬間でもあります。
読み方を変えれば、男の姿は執念とも希望とも取れます。
ただ私には、人を超えた人間の姿を見ました。
著者は、出版社より「印象的な実在の人物の物語を書け」と指示されたそうですが、言われたからといって書ける物語とは到底思えない本です。
自慢ですが、私はこれまで様々な分野の物語を何千冊読んだか知れません。その中で、年齢性別にかかわらず、自身を持って他人に紹介できる唯一の物語です。
問題は、この物語より優れた物語が8年たった今でも(あっ!年がばれる)見つからないことです。