不思議な絵本でした。日本では約20年ぶりの復刊とか。マーガレット・W・ブラウンのクリスマス絵本です。クリスマス・イブの夜のほんのひとときが描かれただけの絵本。でも、その神秘を待ちわびる胸躍る気持ち、その時だけ魔法にかけられたかのような時間の流れ方が絶妙な間で表現され、ドキドキする気持ちが読者にも伝わってきます。イラストはイタリアの画家によるもの。私のクリスマスのイメージと違って、黄色、オレンジ、金色という華やかな色の選択がなされました。オレンジ色で雪の降る夜が表されるのですが、これには驚きました。後半感じたのですが、これは暖炉の火の色なのかもしれません。クリスマスツリーの輝くばかりの美しさには黄色が加わり、ピカピカの様子がよく出ています。クリスマス・キャロルの響く雪の町の情景は歌声の余韻を残し、思わず日本のクリスマスを思い出しました。
わたしの母教会は病院付属のチャペルで、キャロリングはいつも病院内から始まり、その後、町へ繰り出すというパターンでした。実家は毎年、聖歌隊がひと休みをする休憩地点のひとつです。(うちでは、おでんと甘酒をふるまいます。今年も同じと母が言っていました。)厳寒地方でのキャロリングは凍りつくようで結構つらいのです。顔や手足が寒さのために痛くなってくるほど…。そんなこともあり、この絵本を読み、雪降る町でのキャロリング風景を思わず思い出しました。息子も娘も、まだ日本でのクリスマスを味わっていません。華やかな米国の教会でのクリスマスと違って、簡素なチャペルでのイブ礼拝もよかったなと回想します。この絵本のおかげで日本のクリスマスに思いを馳せることができました。
オレンジ色に黒のペン画で描かれるページを、息子と娘はどう感じるのだろうとちょっぴり不安でしたが、二人ともじっと静かに聞き入っていました。このオレンジ色はやはりクリスマスの暖かさを象徴する色なのでしょう。