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夏の雨

パパ・70代以上・埼玉県

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夏の雨さんの声

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自信を持っておすすめしたい 絵本はたねまき    投稿日:2015/10/12
おばあちゃんのはたけ
おばあちゃんのはたけ 作・絵: おおにしひろみ
出版社: リブロポート
 毎日たくさんの本が出版されています。全部を読むことは到底できません。きっと大切な本も読まれないままどこかの本棚にしまわれているのでしょう。
 絵本の世界でも同じです。子ども時代に読んだ絵本はほんのわずか。子どもが生まれて、娘たちと読んだ絵本もあるけれど、それでも読まれなかった絵本はたくさんあります。
 この絵本もそんな一冊です。
 1989年に出版されています。ちょうど娘たちが小さかった頃の絵本ですが、読んであげられませんでした。
 でも、こうして、初めて出会えることができました。

 きっかけはこの絵本のあとに出た『あっちゃんのはたけ』を読んだことです。
 春から小さな菜園を始めて、「はたけ」という言葉に魅かれて、手にしたのが『あっちゃんのはたけ』でした。野菜嫌いのあっちゃんがおばあちゃんの畑を手伝うことで、野菜が大好きになるというお話。
 そのお話にはどうしておばあちゃんが畑をつくるようになったのかというもっと前のお話があったのです。それが、この絵本です。

 土いじりが大好きなおばあちゃん。けれど、家にはそんな場所がありません。
 ある時、ものほしだいの向こうに何も手入れされていない土手を見つけます。
 ここをなんとかできないものか。おばあちゃんは土手にはしごをかけて、耕しはじめるのです。
 なんというおばあちゃんパワーでしょ。
 水を運ぶのも肥料を運ぶのも大変です。でも、おばあちゃんはなんとか苗を植えて種もまきます。
 ところが、ある日おばあちゃんははしごから落ちてしまいます。
 さあ、おばあちゃんのはたけはどうなってしまうのでしょう。

 作者のおおしひろみさんは1954年生まれ。ちょうど私と同世代。
 とてもかわいらしい絵を描いてくれます。
 おばあちゃんの表情はどうでしょう。とてもやさしそうで、それでいてしっかりもの。
 こんなおばあちゃんに育てられた野菜たちはどんなに美味しいでしょう。
 ぜひ、『あっちゃんのはたけ』と一緒に読んであげて下さい。
 おいしい野菜を食べたあとのように、幸せな気分になります。
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自信を持っておすすめしたい いつまでも咲き続けて   投稿日:2015/10/11
ひまわりの おか
ひまわりの おか 文: ひまわりをうえた八人のお母さん 葉方 丹
絵: 松成 真理子

出版社: 岩崎書店
 宮城県・石巻市立大川小学校。東日本大震災で数多くの悲惨な悲しみの中でも、もっとも大きな悲しみが起こった場所として記憶されています。
 全校児童108人のこの学校で実に74人の子どもたちが津波の犠牲になりました。10名の先生も命を亡くされています。
 どうしてこの小学校でこれほどのたくさんの犠牲者が出たのか。遺族が一番知りたいことです。
 津波は天災だから恨んでも恨んでも答えは出ません。でも、子どもたちは何故逃げ遅れて津波の犠牲になったのか。
 本当のことがわかったとしても子どもたちの命は戻ってきませんが、そのことがいつか来るかもしれない災害の防止になるかもしれない。
 そのことは大事なことです。

 この絵本は犠牲となった子どもたちのうちの8人のお母さんの取り組みを紹介したものです。
 あの日に何があったのかを求めるものではありません。
 命を亡くした子どもたちの笑顔をひまわりの花になぞられた取り組みです。
 それは一人のお母さんの「おかの上の花だんに、ひまわりをうえようよ!」という一言がきっかけでした。そして、次々とお母さんが集まって、夏にはたくさんの花が咲きます。
 その取り組みが新聞に紹介されました。葉方丹さんがそれを読んで、石巻まで出かけます。
 そこで出会ったお母さんたち。
 お母さんの話から浮かんでくる子どもたちの笑顔。
 初め、葉方さんは「絵本になればいいな」は、いつしか、ひまわりの花のように、一冊の絵本として出版されたのです。

 葉方さんを動かしたものはお母さんたちの子どもたちについての手紙だったといいます。あるいは、その手紙を書かせたものは、亡くなった子どもたちの思いだったのかもしれません。
 ぼくたちを、わたしたちを、忘れないで。
 亡くなった子どもたちのそんな思いが、ひまわりの花になり、一冊の絵本になったような気がします。
 大川小学校は東日本大震災のつらい傷跡の代名詞のようになりました。
 しかし、忘れないことが犠牲となった子どもたちには一番大切なことではないでしょうか。
 いつまでも、咲きつづけてほしいものです。
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自信を持っておすすめしたい キュウリの花もきれいだよ    投稿日:2015/10/04
あっちゃんのはたけ
あっちゃんのはたけ 作・絵: 大西ひろみ
出版社: ひさかたチャイルド
 野菜嫌いな子はいるもので、いったいどんなきっかけがあったのでしょうか。
 野菜は身体にいいことはわかっているけれど、口にもできないのは可哀想で、できれば子どもが小さいうちに矯してあげたいもの。
 自分で育てた野菜ならどうかしら。これは多くの親が考えつく答えかもしれません。
 実際菜園で野菜を育ててみると、小さな子どもたちがたくさんいます。ぼくんちのキュウリだよ、わたしんちのナスは大きいわ、と随分楽しそうです。
 こういうきっかけで野菜嫌いがなおるなら、菜園もいいものです。

 この絵本の主人公、あっちゃんも野菜嫌いな女の子。
 一緒に暮らしているおばあちゃんが菜園をやっていて、無理矢理連れていかれます。
 おばあちゃんはまずは土を耕します。土の中には色々な虫がいますから、あっちゃんは気になってしかたがありません。子どもというのは、動いているものは好きです。
 だから、つい、「あっちゃんにも やらせて」となります。
 次はキュウリの苗植え。おばあちゃんの作業を見ていると、やっぱりしたくなります。
 水やりだって、やっぱりしたくなって、まんまとおばあちゃんの策略にはまってしまうのです、あっちゃんは。

 とうとう雨が降った日には畑が気になって、ひとりで出かける始末。
 菜園を始めて頃はこの時のあっちゃんの気持ちでした。雨が降ったらどうなるのだろう、風は大丈夫だろうか。農家の人のように野菜で生計を立てているのではないのに、うんと気になります。
 まして水害や台風で畑が被害にあったニュースなどみると、とっても悲しくなるようになりました。育てる苦労が、少しはわかるようになったからかもしれません。

 さて、雨の日一人で畑に出かけてあっちゃんはキュウリに小さい実がついているのを見つけます。
 絵本の世界ですから、限られたページで物語を進行しないといけないことはわかりますが、野菜を育てて最初に感動するのは、花をつけた時かもしれません。さっかくだから、あっちゃんが花を見つけてもっと実がつくのを楽しみにする場面を書いて欲しかった。
 そこがちょっぴり残念。
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自信を持っておすすめしたい ボクがキャベツになったら   投稿日:2015/09/27
キャベツくん
キャベツくん 文・絵: 長 新太
出版社: 文研出版
 文学の世界には超ロングセラーというのがあって、漱石の『こころ』や太宰の『人間失格』などは今でもたくさんの人に読まれている。
 それは絵本でも同じで、中川李枝子さんと山脇百合子さんの『ぐりとぐら』は出版されてから50年以上経つが今でも子どもたちの人気の一冊だ。同じように、この『キャベツくん』も、出版されてから30年以上経っても子どもたちの手から手にわたっていく人気絵本になっている。
 「ナンセンスの神様」と異名のある長新太さんの代表作の一つだ。

 この絵本の素晴らしさはなんといっても色使いではないだろうか。黄色を基調にしてとにかく明るい。ページを開くと、元気になる。長さんは色を多く使わないことで広さを表現しようとしたのではないだろうか。
 黄色い空なんてみたことがない。それは主人公がキャベツという不思議感を少しも変な風にしていない。黄色い空の下なら、キャベツの顔をした子どもがいてもおかしくないし、ブタヤマさんというおかしなキャラクターがいても平気だ。
 キャベツくんがキャベツを食べる生き物がどんな風になるか、想像した絵が空に浮かんでも、きっとこの世界では当たり前なのだ。

 「ナンセンス」といえば、そのキャベツを食べたあとの生き物たちの姿だろう。
 はながキャベツになったブタヤマさん。おなかがキャベツになったタヌキ。ライオンの勇ましい顔がキャベツになったり、ゾウのはながキャベツになったり、クジラ全部がキャベツでできあがったり、ページをめくるたびに子どもたちの歓声と笑い声が聞こえてきそうだ。

 この絵本にはなんのひねりもない。
 あの動物はキャベツを食べたらどうなるんだろう。ただそれだけだ。それだけなのに、読者を夢中にさせるのは、シンプルからだ。
 子どもたちはこの絵本で何かに出会って、複雑な世界にはいっていく。
 また、新しい子どもがやってきて、この絵本に出会って、歓声をあげる。
 また、また新しい子どもがページを開く。
 こんなふうにして、きっと読まれてきただろう、絵本のロングセラーだ。
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自信を持っておすすめしたい 冒険の旅へ   投稿日:2015/09/20
あなたをずっとあいしてる
あなたをずっとあいしてる 作・絵: 宮西 たつや
出版社: ポプラ社
 この本の作者宮西たつやさんは『おれはテイラノサウルスだ』や『おとうさんはウルトラマン』といった作品で人気の絵本作家です。その時は、みやにしたつやという名前で作品を発表しています。
 絵本ですから、漢字が混ざると読めない子どももいるという配慮でしょうか。
 この作品では、「みやにし」は「宮西」と漢字表記されています。絵本というより小学生低学年向きの児童書ですから、そうされたのではないかと思っていますが、ちがうかしら。
 絵はみやにしたつやさんそのままですから、幼児の頃に親しんだ子どもたちが少し大きくなって、自分で読んでみたい、と思う時期にぴったりです。
 その時期の子どもって、絵本は卒業したんだい、と主張したい年頃ですもの。

 この物語の主人公はテイラノサウルスの子どもトロン。
 偉大な父ゼスタとやさしい母セラの間に生まれた子ども恐竜です。
 まだ幼い頃母セラは地震で崖の下に転落してしまいます。そして父ゼスタも群れの抗争でバルトという敵に倒されてしまいます。 でも、ゼスタが死んでしまったのには訳があります。そのことは物語の後半に明らかにされます。
 一人残ったトロンは父の仇のバルトと闘いますが、敗れてしまいます。仕方ありません。トロンはまだまだ子どもですから。
 なんとか一命を取り留めたトロンは何人かの友だちと出会い、さまざまな経験をしていきます。
 そして、元の場所に戻っていくのです。もちろん、バルトと闘うために。
 でも、トロンはすっかり大人になっていました。
 トロンはいつしか偉大な父ゼスタとそっくりになっていたのです。

 物語ですから、起承転結のうまい運びになっています。どこまでは物語の始まりで、何が起こって、どういう展開になるのか、そして最後はどうなのか、とてもわかりやすい構成になっています。
 どんなクライマックスが待っているでしょうか。
 こういう物語を読んで、子どもたちは物語の進み方を学んでいくのでしょうが、まず何よりもわくわくすることが大事。
 さあ、あなたもトロンと一緒に冒険の旅へ。
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自信を持っておすすめしたい 子どもたちに伝えないといけないこと   投稿日:2015/09/13
せんそうしない
せんそうしない 文: 谷川 俊太郎
絵: 江頭 路子

出版社: 講談社
 戦後70年を迎えた今年、高齢化によって戦時中のことを知る人が減少していることが問題化している。どのように子どもたちに戦争の悲惨さを伝承していくか。
 それは戦後生まれの私たち全員が考えなければならない問題だろう。
爆弾が落とされ、街が燃え上がったことを知らない私たち。食べ物がなく、飢えてなくなった人がいることを知らない私たち。銃剣で子どもを殺したことも、殺されたこともない私たち。愛する人を戦地に送りだしたことのない私たち。その人が帰ってこなかったことさえ知らない私たち。
 そんな私たちが、どのように戦争はよくないんだよと伝えていけばいいのだろう。

 安保法案を推し進めようとする政治家たちの多くも戦後生まれだ。それでも、戦争までの距離を何歩も縮めようとするのはどうしてだろう。
 知らないからできるのだろうか。
 そうではないような気がする。
 知らなくても、私たちは想像できる。戦争のことを想像できる。燃える街のことも殺したり殺されたりすることも想像できる。
 ちいさなきっかけで。ちいさな言葉で。
 それがこの絵本なのかもしれない。

 詩人のたにがわしゅんたろう(谷川俊太郎)さんがやさしい日本語で、戦争反対をうたった絵本。
 ひらがなだけで書かれてはいるけれど、最初は大人が読んであげるのがいいかもしれない。
 言葉のリズムが子どもたちに想像の翼を広げさせるはず。
 次は子どもたちが自分で読んでみると、いい。声を出して読んでみると、いい。
 想像の翼は、きっと強く大きくはばたくだろう。
 「せんそう しない」。
 書かれていることは、少しも難しくはない。何故、「せんそう しない」かが明確にわかる。
 誰も殺したり殺されくないからだ。
 そんな簡単なことが、国を守るとか子どもを守るみたいな、あるいは法案説明の難解な答弁で歪められていくのは、おかしい。
 子どもたちに国会での大人の声が理解できるだろうか。

 えがしらみちこ(江頭路子)さんの描く、男の子と女の子。
 この子たちの未来を。私たちは守れるだろうか。
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自信を持っておすすめしたい 今日の天気は?   投稿日:2015/09/06
100のたいこのように
100のたいこのように 作: アネット・グリスマン
絵: ジュリー・モンクス
訳: 浜崎 絵梨

出版社: 小峰書店
 私たちの生活に天気は欠かせないものだ。
 毎日、晴れだったり雨だったり、暑かったり寒かったりする。今日は天気がないなんて絶対にない。
 だからだろうか、いつものことながら今年の夏は暑かったのだろうか、去年はどうだったろうかと思い出そうとするのだが、思い出せない。去年まで遡ることもない。今年の夏はどうだったろう。
 猛暑が記録的だった。いや、その前は雨が続いたような。猛暑がおさまったら、台風だらけ。いや、その前だって、集中豪雨で大変だったはず。
 そんなあやふやな気分で、毎日を過ごしている。
 それなのに、人と会ったら、まずは天気の話。「今日はいいお天気で」なんて。

 天気の様を伝えるのは難しい。最近は映像があるから、強い風とか雨でもわかりやすい。台風ともなれば海岸に打ち寄せる波を映せば、台風だとわかる。
 でも、文章にすればどうすればいいのだろう。
 ゲリラ豪雨なんてどう表現するのか。一転にわかに曇りだし、たちまちのうちに大粒の雨が、なんて。
 最近のニュースでは映像の早送り手法で、そのたちまち感を出そうとしている。
 この絵本の作者アネット・グリスマンは「子供に対して、嵐を限られた言葉で的確に表現できるのは、詩だけだ」と語ったという。
だからだろう、この絵本は詩のように語られる。
 広い農園に嵐がやってくる気配が、言葉で綴られていく。
 「大きなカシの木の葉がゆれる/それは しずかにはじまった」。
 これが、この絵本のはじまりだ。

 いやあ、すごい嵐でしたね、で済んでしまう天気の話を、ここではゆっくりと「カシの木の葉」のゆれから見ていく。どんな天気であっても、最初に兆候があるだろう。
 朝焼けを最初にみたのは、海に浮かぶカモメかもしれないし、夕焼けを感じたのは菜園のアリたちかもしれない。少なくとも、私たちではない。
 そういう天気の移ろいを、この絵本は的確に誌的に描いていく。
 そして、雷を「大地にとどろく100のたいこ」を表現する。
 あなたなら、どう表現するだろうか。
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自信を持っておすすめしたい マネはしないで   投稿日:2015/08/30
パンやのろくちゃん なつだよ!
パンやのろくちゃん なつだよ! 作: 長谷川 義史
出版社: 小学館
 夏休みもそろそろ終わり。
 子どもたちは宿題で大忙し。「ねえねえ、お母さん、この夏何をしたっけ、ぼく」なんて聞いている子どもはいないでしょうね。
 誰も教えてくれないよ。
 それでも、思い出せない時は、長谷川義史さんのこの絵本を読んでごらん。何かのヒントになると思うよ。
 「かおがパンパン パンやのろくちゃん」が主人公のこのシリーズは、パン屋の子どもろくちゃんと商店街のお店の人たちの交流を描いて人気ですが、今回の絵本には夏のお話が四つも収められています。

 「なつまつりのきんぎょすくい」「ゆきちゃんさそってプールにいって」「きもだめしでがんばって」「はなびたいかいにでかけたよ」。
 どれも夏の行事を舞台にろくちゃんの変な活躍が楽しめます。
 金魚すくいは、たくさんの子どもたちがしたのではないかな。逃げる金魚を追いかけても、すぐに破けてしまった経験はきっと誰にもある。ろくちゃんの場合は、お母さんに一回しかしてはいけないという約束をお父さんと破ってしまうのだけど、金魚すくいって子どもだけでなく、大人も夢中になるよね。
 そんな光景、見なかった?
 そういうのが、面白い絵日記になったりするのじゃないかな。

 花火のお話は切実。だってろくちゃんがおしっこしたくなって、トイレに行くのですが、長い順番待ちの列が出来ていて、とうとうおもらししちゃう話。まさか、そんな子どもはいないでしょうが、いたとしてもそれは絵日記には書けないよね。
 やっぱり書くとしたら、きれいな花火を見ましたぐらい。でも、長谷川さんの絵本にあるように、花火の音ってとても大事ですよね。 「ドドドドドドドド ドドドドドドドドン ドーン!」
 きっと耳にした時は、もっとたくさんの音が聞こえたはずだよ。そんなところに工夫をしたら、先生にほめられるんじゃないかな。

 この絵本はそんなふうに子どもたちの夏そのもの。大人の読者には懐かしい夏かもしれません。
 でも、これはあくまでもパンやのろくちゃんの夏のお話。
 そっくりマネするのは、よくないからね。
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自信を持っておすすめしたい 悲しみを抱きしめて   投稿日:2015/08/23
おかあさん どこいったの?
おかあさん どこいったの? 文・絵: レベッカ・コッブ
訳: おーなり 由子

出版社: ポプラ社
 愛する人を喪うのはつらい。
 そういう人にどう声をかければいいのか、そばにいてもわからない。
 それが小さい子どもであれば、余計につらい。
 この絵本は、愛する人を喪う悲しみ、それを克服していく過程を描いている。

 雨の告別式が最初の場面。たくさんの参列者の傘の列。父親に抱かれて小さな男の子。そしてそのお姉さん。
 「おかあさん、どこに いっちゃったんだろう?」
 男の子はお母さんの死が理解できない。
 家の中をさがしても、お母さんはいない。お墓の花を替えにいっても、枯れている花を見て、お母さんは取りに来ないと、思うほど幼い。
 男の子はもしかしてお母さんが戻ってこないのは、自分のいたずらのせいかと心配する。
 ある日、お父さんにお母さんはいつ帰ってくるのってたずねてみた。
 お父さんは、男の子にお母さんは死んで天国に行ったのだと教えてくれたが、男の子は天国がどこにあるのかわからない。
 でも、しだいに男の子はお母さんがいなくても、お父さんやお姉さんとやっていかないといけないのだとわかるようになっていく。

 男の子の大好きだったお母さんはもどってくることはない。
 悲しみを小さくしていくことだけ。
 男の子は少しずつお母さんの不在を受け止め、残された家族との暮らしを受けいれていく。
 イギリスの絵本作家レベッカ・コッブは色あざやかな色彩を使いながら、しかもハデにはならないようにして、愛する人を喪ったものがどのようにして立ち直っていくかを見事に描いた。
 日本語訳を担当したおーなり由子はこの絵本の最後にこう記している。
 「のこされたひとは、生きていかなくてはならない。(中略)わたしは、くりかえす毎日の、なんでもない時間にたすけられました」。

 もちろん、何年経っても何十年経っても、悲しみは消えないだろう。それでも少しずつ残された人は前に向かうしかない。
 子どもたちにこの絵本が伝えたいことを教えるのは難しいかもしれないが、きっと子どもたちにもわかるだろう。絵本は心に届くはずだから。
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自信を持っておすすめしたい ぎゃーあ!!    投稿日:2015/08/16
いるのいないの
いるのいないの 作: 京極 夏彦
絵: 町田尚子
編: 東 雅夫

出版社: 岩崎書店
 寝る前に絵本を読んでもらう。最後まで聞いていたためしがない。でも、なんだかとっても気持ちのいい気分になって、うまくいけば夢でもほんわかとした気持ちになる。
 そんな経験をしたこと、ありませんか。
 でも、この絵本はちがいます。
 とってもこわい絵本です。
 夜、寝る前にこの絵本を読んでもらったら、オメメはぱっちりして、最後に出てくる「すごく こわいかお」をした男の顔が忘れられなくなるかもしれません。
 寝れるかな。
 わるくすれば、夢にまで追っかけてきそうじゃないですか。
 お母さん、今日、一緒に寝てもいい?

 何しろ、この絵本の書き手はあの京極夏彦さんなんですから、怖くないわけがありません。
 京極さんは「怪談之怪」発起人だったり、全日本妖怪推進委員会肝煎だったりするのです。きっと怖いものが大好きにきまってる。
 それに加えて、町田尚子さんの絵がすこぶる怖い。天井の高い梁の上の「すごく こわいかお」をした男の顔の怖いことといったら。
 そればかりではありません。猫の使い方がとても怖いんです。読み方によっては、田舎の猫好きなおばあさんの家に来た男の子の話ってことなのですが、たくさんの猫の一匹一匹の表情が恐怖感を忍ばせています。あるいは田舎の庭の間垣に掛けられているゴム手袋だって、人間の手にしか見えないのですから、ページを開くのも怖い。

 都会暮らしになれた子どもにとっては田舎の家そのものに妖しいものを感じ取るかもしれません。この絵本の男の子のように。
 おばあさんは「みなければ いないのと おんなじ」というけれど、男の子は「みちゃう。いるかもなと おもうと みちゃう。みたら。みたらみたら。」
 ― ぎゃーあ!!

 怖がりの子どもは昼間に読みましょう。
 もし、勇気を出して夜に読んでもけっして天井を見たりしないで下さい。
 だって、この絵本から抜け出して「すごく こわいかお」した男が天井からこちらを見ていないとも限らないですから。

 それにしても、怖い絵本です。
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