とある めだたぬ ちいさなまちの
とりわけ めだたぬ いっけんや・・・
本当に普通の家。でも、一歩中に入ると全然普通じゃない!
日が沈む頃になると、家で、お庭で、結構激しい修行が繰り返され・・・。
「忍者」の日常と、現代人の日常(お父さんはサラリーマン!?)の、
この見事な溶け込み具合がとっても印象的なのがこちらの絵本。
↑背景はビルなんです!
この作品の絵を描かれているのは「山本孝」さん。
一度目にしたら、忘れられないような強さを持つ山本さんの絵。
イソザキもとっても気になっていた作家さんです。
そんな山本孝さんに、今回、お話をお伺いする事が出来ました!
↑ブロンズ新社さんの素敵なオフィスにて・・・。
◆早速ですが、今回「忍者の絵本」を創られる事になったきっかけは?
「今作の設定を考えたのは、作者の市川さんです。
初めて組ませてもらう、という事もあったので、市川さんのイメージを明確に把握する為に、色々と具体的な指示を出してもらいながら、絵本を創っていく上でたくさんのやりとりをしました。」
山本さんはそこからイメージを膨らませて絵本をつくっていく、という作業だそうです。
色々な作家さんと組まれて、絵本を創られる事も多い山本さん。
伝えられたイメージから出発する、という作業も結構好きな方だそうです。
そうおっしゃる山本さんでしたが、
修行の様子、家の中、運動会会場・・・気になる場面がたくさん!
ちょっとずつ聞いてみましたよ。
↑これは貴重なスケッチブックです!キャラクターを決めていく
最初の段階のラフスケッチがたくさん。・・・何だか楽しそう。
◆昔も今も、変わらず人気なのが「忍者遊び」。
何と言っても、最初からドキドキしてしまうのは、
普通の家のドア、そこを開けた途端に
突然繰り広げられる忍術の世界。
廊下を駆け抜けたり、床から刀が出てきたり、手裏剣の練習をしていたり、
居間の天井に張り付いていたり・・・!?
こんなギャップにとても弱いのが子ども達。真剣な顔つきで見入ってしまう様子が簡単に想像できます。本当にあるのかも・・・というリアルな感じがたまらないのかもしれません。
「忍者遊びというと、小学生の頃、実際に僕もやっていました。
設定があって、掟があったり、走ったり、隠れたり。バリエーションがあったり。
とても総合的な遊びなんですよね。
それに忍者って、みんな知っているしね。(ハットリくんの功績?)
だから、とても描きやすかったし、面白かった。」
確かに、その辺の小さな子に「忍者ごっこだー!」と言いながら手裏剣の真似なんかすると、あっという間にみんな夢中で遊び出すなぁ。
ところで、具体的な道具や忍術なんかも登場しますが・・・
「特に、具体的に現地取材などはしませんでした。深みにはまりそうでしたし(笑)。」
設定が現代、と言う事もあって、割と自由なイメージで描かれたそうです。
でも違和感などは全く感じない、これが忍者の世界の懐の深さ?
↑「たっだいまー!」学校から帰ってくるとあっとういう間に早変わり。
例えば、沢山登場する忍者達がそれぞれ着ている衣装。
設定が活かされています。よーく見ると、かなり遊んでますよ。
「一見オーソドックスなつばめ丸の服も、つばめを意識したつくりになっています。」
そうなってくると、からす丸は?こかも丸は?・・・いい味を出しています。
更に、ライバルのがまのしんはカモフラージュ。他にもよく見るとリストバンドをしていたり、マスクがちょっと変?だったり。まだまだ他にも。見つけてみて下さいね。
◆細かいものを描くのは好き!?
もう一つびっくりするのが、富士山の火口が登場する場面!
夜の空にそびえ立つ富士山。それが、上から見るとこんな事になっているなんて。
こんな画面を思いつくのは・・・何か経験が?
「いつも故郷の松山に帰る時、飛行機の上から富士山の火口が見えるんです。
写真を撮っておいたのが役に立ちましたね・・・。」
実際に見られた事があるんですね!
それにしても、その中で行われている運動会の様子。かなり細かいです。
「細々したものを描くのは、好きなんです。」
そうはおっしゃるけど、本当にすごい人の数なんです。
「逆に、少し顔が見える位に近づいた時の場面の方が苦労しました。
顔の表情がわかるので、同じ顔が並ぶのはちょっと・・・と思っていると、
全部の表情を考え出しちゃって。」
そ、それは・・・
「だから、色々の人の顔をモデルにしたりしました。知り合いだったり。
例えばこの人は○△さん・・・。」
だそうです。特に、山本さんの周辺の方々は要チェック、ですね。
これまでで、一番沢山人を描いた!という感想も聞き逃せません。
◆一番苦労されたのは、どんなところですか?
実際に絵本を創っていく上で、一番苦労された点は「アングル」だそうです。
例えば、庭で手裏剣の練習をするシーンだったり、
火口から飛び降りる時のシーンだったり。
↑色々なアングルから、何通りものパターンが描かれていたり、家の間取りが描かれていたり。すごい!!
場面によって、より効果的なのはどのアングルか・・・
カメラで撮る時の様に、目線を意識しながら考えて決めていくそうです。
更に、読み聞かせをする時の事もとても意識されていて、ページをめくった時に驚くように、見開きのページを多くしたり、テンポの良い展開を考えたり。削られたシーンも結構あったそう。
◆絵本作家を目指すきっかけとなったのは・・・?
このお話からも、山本さんの絵本づくりへのこだわりが伝わってきます。
それもそのはず。「絵本作家になりたい!」と思われたのが高校二年生。
きっかけは、図書館で見かけた長谷川集平さんの絵本『はせがわくんきらいや』。
「こんなすごい絵本があるんだ!」と感銘。と、その横に長谷川さんの描かれている
「絵本づくりトレーニング」という本が置いてあって・・・。
こんな、うまいこといく展開ってあるんですねぇ。
その後、絵本学科のある専門学校を卒業され、「あとさき塾」「メリーゴーランド絵本塾」へ通われて。
しっかりと、絵本づくりの基礎を学んでらっしゃるのですね。
今、好きな絵本のお仕事をされて、更に憧れの作家さんと組まれて絵本を創られたり。
その喜びの大きさは、計り知れないものがあるのでしょうね。
◆夜を描かせたらスゴイ人!
山本さんの作品を見ると、画面の隅々まできっちり描かれていて、本当に見応えがあります。
さぞかし一つの作品に、かなり時間がかかるのでは・・・ぎりぎりに上がってくることも?
「でも、出来上がりが予想以上に力強いので、文句なんて言えません!」
と、この絵本を担当された編集の山縣さん。
すかさず山本さんが
「力の抜き方がわからないんですよ(笑)。」
と言えば、
「今回のこの本は、より熱くあって欲しいというイメージがあったので。
実際、本当に期待以上の熱気で・・・。」
こんなやりとりも、とっても興味深く、面白いですよね。
更に山本さんに依頼された理由として、山縣さんは
「例えば『ちゃんがら町』など山本さんは、夜を描かせたらスゴイ人、と思っていたんです。」
山本さんの描く、夜の暗闇は、生々しく、色気がある。
なるほど、そう言われてみると『にんじゃつばめ丸』の夜の場面も、不思議な迫力を感じます。
印刷の仕上がりも、山本さん大満足の出来だったそうですよ。ご覧になってみてくださいね。
その『ちゃんがら町』の世界もとっても独特。
読んでみて、共通して浮かび上がってくるテーマが「遊び」。
山本さんご自身、そうやってよく遊んだ記憶があるのでは・・・と伺うと、
まさにその通りで、故郷の松山では、『ちゃんがら町』で描いている世界と
そんなに変わらなかったそうです。
放課後に、ひたすら遊んだ子ども達だけの時間。
その実際の記憶に、幻想を交えてつくりあげた世界がこの絵本なのだそうです。
その、自分にとって居心地のいい場所に、子ども達を遊ばせる感覚で描き上げる。
登場する子達も、生き生きしているはずですね。
この感覚は、『にんじゃつばめ丸』にも共通しています。
読んでいる子ども達の心を掴んでしまうのも、納得です。
そして、こうもおっしゃっています。
「是非、お父さん達にも読んでほしいです。この頃の遊びの事なら父さん良く知ってるぞ!
とか、忍者のことならまかせとけ!とか。得意気に読んでほしいです。」
同世代の人たちが読んで、ピンとくるポイントが沢山あるんです。
試しにパパに見せてあげてみて下さいね。
「むしプロ」という絵本も、昭和のにおいがぷんぷんしますよ。こちらもオススメ!
お会いした山本さんは、とっても親しみやすい雰囲気の方で、
気さくに絵本について、色々語って下さいました。
お話を伺いながら、絵本を、こよなく愛しているのが伝わってきます。
(奥様も絵本作家さんだそうですよ!)
この貴重な機会に、直筆サインを描いてもらいました。
↑すずしい顔をしているつばめ丸に比べて、
がまのしんの方が描き慣れている顔立ちだそうです。すらすら。
↑遠目の写真だけね。(届いてからのお楽しみ。)
その優しさに調子にのって、こんな写真までお願いしちゃいました。
↑(私達、ちょっとはしゃぎすぎてます。)感謝。
それでは、おまちかねのサイン本はこちらから!数量限定です、お早めに・・・。
更に最新作こちら>>>
山本さんは妖怪が大好物、だそうですよ。お楽しみに。
帰り際には、カナガキ事務局長もすっかり山本さんの大ファンに!
これからも、目が離せなくなってしまいましたね。