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きむらゆういちさんのオフィスにお邪魔しました!

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童話作家きむらゆういちさんのオフィスにお邪魔しました!

子どもから大人までを虜にした大ベストセラー「あらしのよるに」シリーズや、
赤ちゃんに人気の絵本としてながく愛され続けている絵本「いないいないばああそび」、
最近では愉快な設定が絵本ナビ読者の間でも人気を集めつつある絵本「どうなるどうなるあなのなか」など、数々の名作を生み出されている童話作家と言えば・・・・この方ですね。

きむらゆういち(木村裕一)さんです。

今回、新作絵本

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ワオとレオンのどっきりやっぱりまちあわせ
※みどころはこちら>>>

発売記念という事で、きむらゆういちさんのオフィスにお邪魔させて頂き、
直接お話をお伺いすることがきできました!!

以前、書店勤務時代にお世話になった事があり、
その時の事を覚えて下さっていたきむらさん。
とっても気さくな方で、終始にこやか。

緊張感をほぐして頂き、和らいだ雰囲気で
新作「ワオとレオンのどっきりやっぱりまちあわせ」の事や、
絵本製作秘話までたっぷりとお話を伺う事ができました。

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↑洗練された雰囲気の素敵なオフィスに、きむらさんの作品やグッズがいっぱい!


◆子どもの友情とは・・・?


今回この絵本を読んで一番印象に残ったのが、
(恐らくとっても小さな子ども達であろう)ワオくんとレオンくんの、
「ともだち同士」としてのやりとりの場面。
特に最後、お互いに全部わかっている訳ではないのに成り立っている会話のやりとりなんて、
何でもない様にみえて、大人の私でもぐっと来てしまう場面でもあるのです。


―きむらゆういちさんの作品には、「友情」というテーマで描かれているものもとても多いと思うのですが、今回の主人公の二人はとっても小さな子の設定です。「友情」を描く時に、また違った思いがあったりもするのでしょうか?


「お話をつくる上では、年齢や月齢の事は、特に考えている訳ではないのです。
 でも『友情』『友だち関係』そのものは、色々な表現方法があると思っていて、
 『ベタベタするだけが友達じゃないよ』という様な事は考えていましたね。」

ときむらさん。

例えばこのお話の主人公のふたりの関係。

レオンくんは、とってもいたずら好き。
レオンくんはワオくんが好きだから、いたずらしたり、ちょっかい出したりして喜ぶタイプ。
それに対してワオくんはちょっと「ボケ」の役割。ただただレオンくんを心配するタイプ。
レオンくんの手の中にワオくんがいる様でいて、でもちょっと手の外へ出てしまうと
レオンくんは慌ててしまったり・・・。

性格も表現方法も全然違うタイプのふたり、すれ違いもあったりするけど、
両方がベタベタくっついている関係よりもうまくいくんじゃないのかな?・・・ときむらさんは
考えられたそうです。
そんな関係って言われてみれば、思い当たるような・・・!?

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◆友情には「段階」がある?

そうは言っても、やっぱり初めから大人の様な友達関係を築ける訳ではなく・・・。

きむらさんの息子さんが、幼稚園で初めてケンカをした時のこと。
先生からの報告を受けて「すみません・・・。」と謝っていたきむらさん、先生に
「やっとケンカができるようになったんですよ。」
と言われたそうです。
「集団生活の中で、自分を出せるようになる事ってスゴイ成長のひとつなのかもしれない。」
そう思われたきむらさん。
この子が好きという感情が芽生えて、その気持ちを表現しようとちょっかいを出したり、
くっついてみたり、ケンカしたり。
そうやって体ごと試しながら関係を築いていく・・・。
それが、小さな子にとっての「友情」の初めの段階なのかもしれませんね。

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子ども同士の関係を見ていると、
時々こちらの理解の範ちゅうを超える様な行動を起こすこともあります。

毎日取っ組み合いのケンカをしている二人なのにとっても仲良し、
いじめっ子の事をみんなでかばったり、
好きな子に対してちょっかい出したり(ここは大人も同じ?)・・・。

そんな子ども達のやり取りは、きむらさんの目にはとっても面白く新鮮にうつるのでしょうね。
お話を創っていく上で、そんな部分をとても大切にされているそうですよ。
子ども達の気持ちを丁寧に描く事が、子ども達の大きな共感を呼ぶ秘密なのかもしれません。

「子どもというのは、相手が大人であろうが子どもであろうが、いたずらするのが好きなんですね。隠れたり、ちょっかい出したり・・・。
そういった意味で、実はこのお話はレオンの視点で描かれている物語かもしれないなぁ・・・。」

言われてみれば・・・
ワオくんが主人公として登場しますが、心が大きく揺れ動いたり、
事の一部始終を全て知っているのは実はレオンくんの方!?

うーん、奥が深いです。

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大人も子どもも、例えば「好き」という感情一つとっても
基本的には変わらないのだとは思います。
でも、子ども達って一切「取り繕う」って事をしない。
だからこそ子ども達のやり取りには、魅力があり、
また様々な出来事が起こるのでしょうね。


◆きむらさんの作品が世代を超えて共感を呼ぶ「秘密」は・・・?


「冒険物語のように、舞台となる場面が大きく変化しながら展開するお話は勿論面白いと思うけど、ボクは、ちょっとした場面の中での会話や人間関係などから生まれるドラマの方が面白いと感じるなぁ。」

今作品でもそうですが、限られた設定の中で、会話劇でストーリーが進んでいったり、
二人の人間関係の変化やその緊張感などで盛り上がっていく・・・という物語を描く事に
一番興味がある、とおっしゃるきむらさん。

きむらさんの作品が、多くの世代の心をひきつけて止まないのは、
どうやらこの辺りに秘密があるようです。
そういった人間同士の関係性からくる会話や緊張感を丁寧に描く事で
読んでいる人が感情移入しやすくなるのでは・・・とは御本人の言葉です。

また、子ども達の習性や遊び、また面白がるような場面を入れる事も
子ども達の共感を得られる大きなポイントとなるそうです。
確かに、その方が子ども達もすんなり物語の世界に入れるのでしょうね・・・納得です。


◆ワオキツネザルとカメレオン。


さて、この物語の主人公のふたり。
パっとみて、ワオくんが何という動物かわかった方はいるでしょうか?

正式には「ワオキツネザル」というおサルさんなのですね。
レオンくんは(こちらは有名?)「カメレオン」です。
そして、舞台はなんとマダガスカル島。バオバブの木を見て「あれ?」と思われた方もいるかもしれませんね。


-どうしてこんな珍しい組み合わせの主人公になったのでしょうか?


「最初のきっかけは<リトルパンゲア>というマダガスカル島で存続の危機にある動植物を救うための活動されている方からのお話でした。」

ただ、きむらさんの創作活動の方針として、
「直接的な強いメッセージ性のある絵本をつくる」という事にはあまり関心がなかったので、
暫くはこのお話が生まれる事はなかったそうです。

ところが、マダガスカル特有の動物として「ワオキツネザル」や「カメレオン」などの存在を知り、
実際にご覧になった時に「ピンッ!」と来るものがあったのだそうです。

特に注目したのは「カメレオン」の大きな特徴の一つとして、体の色が自由に変えられること。

「もし自分が子どもだったとして、こんな夢のような体を持ったらどうするだろうと
考えると思ったんです。
体の色を変えて隠れたり、いたずらしたり、あんな遊びやこんな遊びや・・・!」

と嬉しそうに語るきむらさん。

「でも、やりすぎてちょっと失敗したりして。
 その一方でボケ役のワオくんが受け止めたり・・・。
 この組み合わせは面白い話がつくれそうだぞ!」

こうして「ワオとレオンのどっきりやっぱりまちあわせ」の制作がスタートしたのです。

絵を担当されているのは江村信一さんです。
江村さん御自身はリトルパンゲアの活動に参加されているそうです。
直接的にマダガスカル島を描いている訳ではないそうですが、
独特な色彩やのんびりした雰囲気は楽園という場所柄をとても感じます。
主人公のふたりのキャラクターもとっても可愛いですね。


それにしてもきむらさん。
カメレオンを見てそこまで発想が膨らんでいくとは・・・。
やっぱり子どもの気持ちを良くわかっているから?
それとも、きむらさん御自身の中にこどもの心があるのでしょうか?
こうして、また一つ名作が生まれていくのですね。


◆発想はどこからくるの・・・?


そんな風に思いついたら早い、きむらさんの創作活動の発想のもとは
一体どこからやってくるのでしょう。


-普段から、常に作品の事を考えられているのでしょうか?


「いつもじっくり考えている・・・とは言えないですが。
 普段の生活の中でも、常に頭のどこかにはありますよ。

プロとアマの一番大きな違いというのは、アンテナの張り方だと思っています。
例えば商店街を歩いていても、
 主婦という立場の方、喫茶店の経営をされいる方、デザイナーをされている方・・・
など、目に飛び込んでくるものはそれぞれが全然違うと思うんです。

ボクは童話作家なので、いつも自然にネタを探しているような所はあります。
そこに全然関係ないテーマ(例えばカメレオン)と結びついた瞬間に、
アイデアがむくむくと膨らんでくるのです。」

日常の会話の中にだって、人生の本質みたいなものが隠れていたりするものだ
とおっしゃるきむらさん。
さり気ない言葉ですが、「童話作家として生きていく」・・・という覚悟をしっかりとお持ちの上で、
その道を進まれている姿・・・というものをひしひしと感じます。


◆ラフ案を見せて頂いちゃいました!


お話を創作される際には、場面も一緒に思い浮かぶというきむらさん。
「絵本は場面だから。」
とはっきりおっしゃっていました。
だから、きむらさんのつくるラフ案というのは、
文章だけでなく、簡単な絵も一緒に出来上がっていて
すでに「絵本」の形を取っているそうです。

そのラフ案がきむらさんと画家さんとのコミニケーションの場。
最初のラフ案には(ここには描けないような・・・)様々ないたずら描きも
あったりするそうで(笑)。

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今回は、2回目のラフ案というのを見せて頂きました!
貴重な画像ですね。

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↑とってもわかりやすいラフ案。イメージが既にしっかりと見えてきます。


◆最後に・・・。


今回のメールマガジンでの特集に寄せて、
きむらゆういちさんが絵本ナビ読者の方々の為に
直筆メッセージを描いてくださいました!

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おしゃべりをしながら、アイデアを出しながら、
本当に楽しそうに描くきむらさんの様子です。

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↑完成がこちら!

最後に記念撮影をぱちり!

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とても楽しい時間を過ごさせて頂きました。
また、新作が出る際には何か面白い企画ができるといいねぇ・・・
なんて、嬉しいお話も出ていましたよ!

きむらゆういちさん
オフィスのスタッフの皆様
長崎出版さん
ご協力ありがとうございました!

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