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絵本『にじいろのさかな』の作者マーカス・フィスターさんにインタビューしました!

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世界中で愛されている絵本『にじいろのさかな』。シリーズでは何と1500万部を突破したそうです。今年の夏、そんな「にじいろのさかな」シリーズの待望の新刊が発売されました。
にじいろのさかな うみのそこのぼうけん』です。ちょっとたくましくなったにじうおくん、見たこともないような深海の生きものたちの登場など今回もみどころが満載の一冊となっています。
その発売を記念して、今回は出版されている講談社さんの御協力のもと作者であるマーカス・フィスターさんへのインタビューが実現する事ができました!『にじいろのさかな』から最新刊のお話、また読者からの質問も含めて丁寧に答えてくださいました。是非絵本と合わせてじっくりお楽しみください。

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マーカス・フィスター(Marcus Pfister)
1960年、スイスのベルンに生まれる。高校卒業後、ベルンの美術工芸学校の基礎科に入学。その後、グラフィック・デザイナーとして、1981年から1983年までチューリッヒで働く。カナダ・アメリカ・メキシコを旅行ののち、帰国後はフリーランスのグラフィック・デザイナー、イラストレーターとして活躍している。おもな作品に「ペンギンピート」シリーズ、「うさぎのホッパー」シリーズ、「にじいろのさかな」シリーズなどがある。1993年、ボローニャ国際児童図書展エルバ賞を受賞した『にじいろのさかな』をはじめとする「にじいろのさかな」シリーズは、世界で1500万人の読者に迎えられた大ベストセラーとなっている。


 ■ 『にじいろのさかな』についてお伺いします。                                                            


―― 絵本『にじいろのさかな』を目の前にすると、世界中の誰もがまず「ひかるうろこが美しい!」と感じるのではないでしょうか。だからこそ成り立つお話なのだとも思います。この作品のアイデアを思いつかれたきっかけというのを教えて頂けますでしょうか?

ひかるうろこは、たしかにこの本の重要なポイントです。でもこの本が、大きな成功をおさめたのは、うろこのためだけではありません。多くの学校や幼稚園に買っていただいたり、人々が本屋さんで、友だちへの贈り物としてこの本を買ってくださったのは、このお話のコンセプトによるところが大きいと思っています。このお話をみんなで分かち合いたい、と思ったのです。
うろこを選んだ理由は、そうですね、もし、このにじいろのさかなを他のキャラクターから際立たせるものが、「色」だけだったとしたら、他のキャラクターは当然味気ないグレイにするしかありません。なので、私はそれ以外の特徴を探しました。そして結果的にうろこは、このお話をもっともすばらしい形で完成させることに役立ちました。「分かち合う」というコンセプトを底のところで支える、そういう要素になりました。ただ色のついたさかな、だけではこういう風にはならなかったと思います。
本物のきらきらひかるうろこをあげてしまう-これがこの作品を特別なものにしたのだと思います。

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―― 読者の間では「自分の大切なものを人に分け与えればこそ幸せになれる」という部分に大きなテーマを感じられている方も多いようです。色々な捉え方をされるのが絵本だと思いますが、マーカス・フィスターさんが考えられているこのお話の中のテーマをシンプルな言葉で教えて頂けますでしょうか?

私たちを特別な何者かにするのは、何を持っているか、によってではなくて、何をしているか、によってではないでしょうか。もっているわれわれが、もたざる誰かとそれを分け合うのはとてもよいことと思います。あるいは、ただたんに、誕生日やそのほかの機会に贈り物を贈る、という習慣のことを思い起こしてください。誰かを幸せにするってことはとても楽しいものですよね。


―― 「にじいろのさかな」シリーズ第2~5作の中で、にじうおは様々な困難や周りとの関係性に立ち向かっていきます。それはまるでにじうおの成長記を見ているようですね。マーカス・フィスターさんが実際にお子様との触れ合いの中からお話に影響を受ける、という事もあるのでしょうか?実際ににじうおにはモデルがいたりするのでしょうか?

いえ、モデルはいません。私はそれぞれ違うところからインスピレーションを得ています。
たとえば第2作においては、私の長男の学校での経験から、第3作では私自身が子どものころ年長のきょうだいと一緒に経験したことからインスピレーションを得ています。
想像するに、これら6つのにじいろのさかなシリーズは普通の子どもたちの周りに起こりうることを反映しているように思います。


 ■ 最新作 『にじいろのさかな うみのそこのぼうけん』についてお伺いします。                                                           


―― 今までとは少し違い、自分にとって本当に大切なものがはっきりみえているようにみえるにじうお。自分の中の明確な意思を持って知らない世界に立ち向かっていく様子がとても印象的でした。また、その成長を祝福するかのようにたくさん降り注ぐキラキラが素敵ですね。第一作が登場してから随分時が経っています。この6作目に対する想いというものを教えて頂けますか?

私はこの話のテーマが大好きです。私は今でも子どものころ大事にしていた、他の何にも代えがたいテディベアをなくしてしまったことをずっと覚えています。
この本はまた私たちが、これ以上もう望むものはなく現在持っているもので十分幸せなのではないか、ということを教えてくれます。私たちも子どもたちに「つつましさ」を教える時期が来ているように思います。


―― これから手にする日本の読者に向けて、この作品の「みどころ」を教えて頂けますか?

上でご説明したことに加えて、私は、にじうおに、新しい世界を発見させるのが好きです。ですから、日本の読者の方にも、にじうおといっしょに深海に住む新しいさまざまな生き物との出会いを楽しんでほしいと思っています。彼らはとても美しくて、格別ですから。

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 ■ 絵本作家マーカス・フィスターさんについてお伺いします。                                                           


―― 絵本を制作される時、どの瞬間が一番楽しいですか?また大変な部分というのはどの辺りですか?

それはもちろん新しい話を考えているとき、でしょうね。新しいキャラクターを考え、最初にスケッチするときもわくわくするかもしれません。でも本を完成させるには大変な苦労が伴います。それが一番苦しいところです。


―― 絵本を通して子ども達へ伝えたいメッセージというのはございますか?

それは本によってそれぞれですね。全ての本に重要なメッセージを埋め込む必要もないと思っています。ときどき私はただ自分の楽しみのためだけ、そして、それはすばらしく魅力的な本の世界を若い読者に紹介することで、彼ら自身もそれを楽しんでくれる、そういうために書く本もあります。


―― 絵本作家になって良かったなぁ・・・と感じられる時はどんな時ですか?

アトリエで仕事に向かっているときはいつも幸せです。本当に仕事が好きですからね。でももちろん、いろんな世代の読者からの反応がかえってきたときはやっぱりよかったと思いますね。


 ■ 絵本ナビ読者の方からの質問です!                                                           

※ここからは、皆さんが寄せてくださった質問の中から答えて頂きました。

―― 海の風景や生き物がとってもきれいです。海がお好きなのですか? (ご自宅から海が見渡せるのでしょうか?ダイビングをされるのでしょうか?にじうおのモデルの魚は?登場する魚を選んでいくポイントは?)

残念ながら私の住むスイスには海はありません。でも旅行をして、他の国で海を見ることは大好きです。毎回新しいお話を考えるときに、このにじうおの世界を完璧なものにできる新しい動物のキャラクターはいないか、探しています。


―― うろこのきらきらを印刷するのはとても大変そう!実現はすんなりできたのでしょうか?

担当の編集者がたいへんな苦労をして安い料金でこの印刷ができるところを見つけてきてくれました。こういうキラキラ印刷(ホログラフィック)をする費用はとてもかかるので、当初考えていた値段で印刷ができるとわかったときにはとてもうれしかったです。


―― 海の色の青を始め、色彩がとっても美しいです。色をつけられる際、何を一番大事にされていますか?

色を塗って、まだぬれているところに、さらに色を重ね、にじませる塗りかたをします。水の雰囲気がとてもよく表現できるので。


―― 『にじいろのさかな』読者からの嬉しかった反応はございますか?また国によって反応は違いますか?

国によって反応が違うということはありません。うれしかった手紙……。小さな読者からの「こんなお話を書いて」というお願いだったり、おばあちゃんが孫に私の書いたお話を読んで楽しかったとか、そういうものですね。


―― にじいろのさかなの夢はなんですか?

彼が夢を僕には話してくれたことはありません。でも想像するに、ただ、多くの友だちに囲まれてきれいで健康的な海で平和に過ごすことではないかな、と思います。きれいな環境を維持できるかどうかは、われわれにかかっているわけですが・・・。


―― 絵本を描かれる際に読者の年齢を意識されますか?

もちろんです。でも同時にこれを手に取り、子どもに読み聞かせてくれるご両親のことも意識しますね。


―― 絵本を制作される前など何か日課はありますか?

申し訳ないですが、これといってないですね。


―― 子どもにとって本とは?

たんに美しい絵とすばらしいお話がある、というだけのものではないですね。ママやパパ(あるいは両方)と一緒に座って、お話を聞いたり、質問したりして、両親をちかしく感じる。そんなすばらしい習慣をもたらしてくれるものです。


 ■ 最後に絵本ナビ読者に向けてメッセージをお願いします!                                                            

日本に多くの読者がいることをとても誇りに思います。魅力的な国、日本で過ごしたすばらしい日々を今も思い起こします。また近いうちに是非訪れてみたいです。


マーカス・フィスターさん、ありがとうございました!
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