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絵本作家たごもりのりこさんにインタビューしました!

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江戸時代の大阪を舞台に、「きくきく屋」というくすりやに奉公する小さな丁稚(でっち)、
こまめどんの日常を大阪人ならではの人生の知恵を交えながらテンポよく描く
なにわのでっちこまめどん」シリーズ。とにかく泣いたり、笑ろたり、大忙し!

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  『どっちもどっちの巻』    『ねずみこわいでちゅうの巻』   『どろぼうどいつやの巻
     作・村上しいこ 絵・たごもりのりこ  佼成出版社

作者は村上しいこさんです。設定がとってもユニークですよね!
江戸時代の大阪。くすりやで働く丁稚。この独特な世界は絵の力なくして表現はできません。
そこで登場するのがたごもりのりこさん!
佼成出版社の担当編集者の方に誕生秘話エピソードを教えていただきました。


村上しいこさんご夫妻と奈良観光をご一緒していたときでした。興福寺で、昔の奈良の町なみを描いた絵が目に留まり、「あ、しいこさんの時代ものって読んでみたい!」と思いつくまま、その場で、しいこさんにご相談。「自分が描くならば、では大阪で」ということで、あれよあれよという間に“こまめどん”が誕生しました。笑いと人情味あふれるテキスト。その絵は――?
 そのとき「!」と頭にうかんだのが、たごもりさんでした。テキストを読みこんで読みこんで、作品世界を魅力的に広げてくださる、たごもりさん。そののびやかで温かな画風は、きっと、こまめどんをいきいきと、絵本の中で動かしてくださるだろうと、大いなる期待とともにお願いしました。もちろん、できあがりは期待以上でした!

そして完成した「なにわのでっちこまめどん」シリーズ
今回はその発売を記念して、たごもりのりこさんへのインタビューが実現しました!その作品への想いを語っていただいています。


たごもりのりこ(田籠範子)
骨董屋を経て、絵本作家・イラストレーターに。主な作品に『そらうで』(講談社)、『ごっほんえっへん』『ばけばけ町へおひっこし』『ばけば町のべろろんまつり』『ばけばけ町でどろんちゅう』(以上、岩崎書店)、『おったまげたとごさくどん』『どうぶつどどいつドーナツ』(共に鈴木出版)、挿画に『鬼の市』(岩崎書店)、『ぼくんち戦争』(PHP研究所)、『うちゅういちのタコさんた』(国土社)など多数ある。公式HP>>>



■ 舞台は江戸時代の大阪!ユーモアたっぷり人情物語


―― 「なにわのでっちこまめどん」シリーズのお話の内容を初めてご覧になった時の印象を教えていただけますか?

大阪の江戸時代とな!と、最初は慌てふためきました。
でも、登場する目かつら売り、のぞきからくり、南京玉すだれ等々・・・昔ちんどん屋さんの仕事をしていたこともあり、路上の演芸や商売は、興味のある分野でもありましたので、これらを描ける機会をいただけたことは、とても嬉しかったです。


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▲ちんどん屋さんのお仕事とは!!その好奇心が存分に生かされている場面ですね!

―― この作品の大きな魅力は何と言っても“こまめどん”の愛嬌!くるくると変わる表情を見ているだけでも楽しくなってきます。たごもりさんは“こまめどん”を描かれる時にはどんなキャラクターとして考えられたのでしょうか?

こまめどんの顔立ちは、関西弁のテキストをいただいた時、頭にすぐに浮かびました。関西弁には、それだけの強い力、押しの強さ(笑)があったといいますか。「こんな 顔やろう?そやねん!」と、こまめどんに言われている気分でした。泣き虫だし、つまみぐいしちゃうし、ばんとうさんに叱られつつも、「まあ、ええやん!」と明る く丁稚奉公している、そんなところがこまめどんの魅力でしょうか。

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▲この表情!!確かにセリフを読んでくるとこんな表情が自然に浮かんでくるかも・・・!?


―― こまめどんだけでなく、作品に出てくるその他の登場人物たちもとても表情豊かで大らかで魅力的ですね。たごもりさんのお気に入りのキャラクターはいらっしゃいますか?

こまめどんを、時に見守り、時に叱咤する、ばんとうさんですね。実はいかりや長介さんがモデルなんですよ。


―― 時代は江戸、舞台は大阪のくすり屋。設定がかなり具体的ですよね。絵を描かれるにあたって、大変だった点、面白かった点などを教えていただけますか?

「浪速名所獨案内」(なにわめいしょひとりあんない)という、大阪の古地図があるのですが、作者の村上しいこさんが、その古地図をもとにしてイメージを膨らませたお話だったのです。残された数少ない当時の資料から、お話に合わせて画面を再構築しなければなりませんでした。絵本としては、実際の当時の状況から異なる創作部分もあるのですが、“タイムマシン”と“どこでもドア”がどんなにか欲しいと思ったことか!(笑)

面白かったのは、大阪と江戸の違いを意識できたことです。
大阪だと鍋の把手が無 いものが一般的、とか、まな板の足の数が違う(今回、絵にはしませんでしたが)とか。あとは、薬屋さんゆえ、へっつい()にはお客さんにお茶を出せるよう茶釜がいつもあったり、数も多かったり。長屋の台所と商家の台所も、違うものだな あと、思ったりしました。
※竈(かまど)


■ ユニークな経歴!


―― そのような感想が出てくる事自体が驚きで、さすがはたごもりさんと思ってしまうのです。骨董屋で働かれていたご経験があるそうですね!絵本の制作に影響はあるのでしょうか?また、その頃から絵本の制作には興味を持たれていたのでしょうか?

西荻窪のベビヰドヲルという、古人形や昔の玩具、生活道具を扱うお店で、たまにちんどん屋さんの仕事に呼ばれたりしながら、7年ほど働いてました。日常的に数多く の昔のものに触れられたことは、今の自分の財産になっています。ただし、自分で開業したお店はあっという間に閉店させてしまったので、商才は無かったようです。

骨董屋で働く前に、図書館の児童書コーナーで働いておりました。下っ端図書館員ゆえ、よく閉架書庫の整理などしながら、こどものとものバックナンバーなどを読み あさってましたね。絵本にのめりこんでいったのは、この頃です。鈴木三重吉の赤い鳥の復刊バックナンバーなどもこっそり読んでいたので、昔の絵本や、古いものへの興 味も、この時に生まれました。


―― 「なにわのでっちこまめどん」シリーズ3冊、それぞれの「ここは見てほしい!」というポイントを教えていただけますか?

一巻「どっちもどっちの巻」では、目かつら売りや、のぞきからくりなど、当時の子どもと一緒に遊んでいるよ うな気分を味わえてもらえたらと、思います。

二巻「ねずみこわいでちゅうの巻」は、町人のようなねずみ達とのやりとりですね。また、暗くて怖い蔵の中だというのに、そこはやはり大阪の子ども、妙にのりのりでもあるだいきちどんとこまめどんの姿に注目です。

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三巻目「どろぼうどいつやの巻」は、疾走していく言葉遊びと、次々出てくる町人達と共に、泥棒追いかけ、息をぜえはあ切らして下さい。


―― 子ども達にはどんな風に楽しんでもらいたいですか?

小学校のイベントに伺った時、高学年の子達でしたが、丁稚という存在そのものを知らなかったんです。そりゃ確かに大村昆さんの丁稚ものとか、よく知ってる今の子 ども達がいたらそれはそれで驚きかもしれません。(大阪の子どもは知ってるのかも しれませんね。)
子どもが働き手でもあった時代、実際の丁稚奉公は絵本とは異な り、過酷な面もあったかと思いますが、東京、大阪、関係なく、江戸時代の丁稚気分を楽しんでいただけたらと思います。


―― 今後どのような絵本をつくっていきたいと思われますか?

しばらく江戸時代ものが続いてるので、昭和あたりにタイムスリップなんてのもいいですね。
しかし、まあ、まだまだ未熟者ゆえ.・・・、ひたすら精進といいますか、筆を動かし、学び、表現していきたいと思います。

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―― ありがとうございました!


merumaga.jpg 西荻窪・ベビヰドヲルにて撮影
▲お話にも出てきました、たごもりさんが以前長いこと働かれていた古物屋さんを背景に。
 ベビヰドヲルのサイトはこちらです>>>

温かく、ユーモアたっぷりの絵なのですが、細かい部分にたくさんのこだわりも垣間見えて・・・その幅広い表現力こそが大きな魅力のたごもりのりこさん。今後どんな風に更に開花されていくのか本当に楽しみですね!


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