「ねぎぼうずのあさたろう」アニメ放送開始!記念 特別企画 特集3弾<後編>。
【後編】
アニメ「ねぎぼうずのあさたろう」を制作されている
キャラクターデザイン・・・稲上晃さん
美術デザイン・・・渡辺佳人さん
色彩設計・・・塚田劭さん
こちらの3人の方にお話を伺いました!
前編からの続きです・・・。(【前編】はこちら>>>)
前編では、江戸時代末期の時代設定をベースに服装から背景、色彩をつくられる・・・
というお話までご紹介しました。
お話をお伺いしていると、キャラクターデザイン、美術デザイン、色彩設計のお仕事の関わり方がとっても印象的でした。
大まかな流れで言いますと(ざっくりです、すみません!)
●作家さんが書かれたシナリオを元に、演出の方が絵コンテを描かれます。
(ここで既に、キャラクターの表情などの指示が入る事もあるそうです。)
↓
●それを元に作画の方がキャラクターを描かれ、それと共に背景も描かれるそうです。
(例えば宿屋がある、山がある・・・など)
↓ ↓
●背景の制作をされる。 ●キャラクター設計図を描かれる。
(渡辺さん) (稲上さん)
↓ ↓
●色彩設計の塚田さんが、その場面の背景・時刻に合わせて色を設定される。
その背景の色に合わせながら、キャラクターの色も設定する。
その場面や背景、時刻などに合わせて、キャラクターの色合いも少しずつ変化させていく事で、キャラクターが背景に馴染み、雰囲気も創られていくのです。
「自然な画面が出来上がり、そうした作業をされている事が見ている人に気づかれない程、この連携プレーが上手く行っている・・・」という事なのだそうです。
うーん!奥が深いです・・・。
稲上さんのお仕事は、キャラクターデザイン。
何となくイメージは出来るのですが、では具体的にどんな作業をされているのでしょう?
キャラクターデザインというお仕事
物語に登場するキャラクター(人物、動物、乗り物まで含めて)を全てデザインをします。
例えば人物で言うと、
・ 容姿はどうなのか
・ 性格はどうなのか
・ どんな表情をするのか
・ どんな服装・髪型をしているのか
など、沢山のポイントがあります。
演出家やスタッフの方達と話し合いながらイメージを固めていくそうです。
それを紙の上に絵で表現し、キャラクターを形にしたものが
「キャラクター設計図」というものだそうです。(稲上さんが描かれています。)
↓その貴重なキャラクター設計図を前にお話をして下さいました!!
その設計図を見ながら、
作画監督さん達始め大勢の原画・動画のアニメーターの方達
(何班にも分かれているそうです!)
が絵コンテをもとに芝居をつけて、キャラクターを動かしていくのだそうです。
こうした沢山のアニメーターやスタッフの方達の力が合わさって
初めてキャラクターが生き生きと動き出すのだそうです。
1場面に関わっている人数は・・・
今回いらして下さった稲上さん、渡辺さん、塚田さんは
作品の中の基本的な部分を作っていかれる方達なのだそうです。
その基本形を膨らませていく方達が、作画監督さんや大勢のアニメーターの方達。
その膨らませ方次第で、作品が良くなっていくかどうか決まっていく・・・との事で、
本当に大きなチームワークで1つの作品を創り上げているのだなぁ、と改めて驚かされます。
こうして考えると、数秒の場面に関わっているスタッフの方々、
1つのお話に関わっているスタッフの方々と言うのは・・・
「スゴイ人数だと思いますよ。」(稲上さん)
もう、来週から作品の見え方が変わっちゃいますね!
主役級の3人「あさたろう・にきち・こもも」のうち、
原作絵本には出てこないオリジナルキャラクター「こももちゃん」。
彼女について、少し詳しくお話を聞いてみました!
「こもも」誕生秘話!
あさたろう達が繰り広げる旅物語の道中で、
子どもたちが共感できるようなキャラクターがいるといいね、という話がありました。
男の子の共感できるキャラクターとして、「あさたろう」と「にきち」がいます。
それでは、女の子の共感できるキャラクターはどんな子がいいかな?
・・・という所からアイデアが出発したそうです。
原作者飯野和好先生、アニメ制作スタッフにそれぞれお話を持ちかけられ、
また稲上さんにもキャラクターデザインの依頼をされたそうです。
ここで色々な案が出てきながら・・・
最初のイメージとして、
飯野先生が門付け(三味線を持って街角や玄関で弾き語りをする)というスタイルの
提案があったそうです。
そこで稲上さんがラフを起こしながら
飯野先生、スタッフの方々と話合いながらこももちゃんの姿が決定したのです。
↑こもも「門付け」スタイル!(詳しくはこちら>>>)
この設定に決定された時、稲上さんは三味線を描く為に、
実際に三味線を弾かれる方(東映スタッフの方でいらっしゃったそうです!)
に弾き方まで教わってみたり、深川資料館で行われる「新内流し」という三味線の演奏会の
取材をされたりと、結構苦労されたそうですよ。
(何でも実際に感触を味わってから描く・・・という信条が伺えるエピソードですね。)
キャラクター設定としては、
・ 歌が上手くなりたい女の子(イマドキの女の子に共感を得そうですね。)
・ 実は元くの一。何だけど・・・あまり優秀ではなかったみたい。
(そういえば、既にお話でも何度か術を失敗している姿が放映されてますよね。)
・ グルメ。
↑こもも「くの一」姿。かわいい。
こもも「忍者学校時代」のエピソードもあるそうで・・・お楽しみ!
↑手裏剣、剣がこんな形だった事に気が付きましたか?やっぱりかわいい。
こももちゃんに関しては、飯野先生も積極的に色々なご提案をされていたそうで、
アニメ化にあたって本当に楽しんでらっしゃる様子が伺えますね・・・。
他のキャラクターについても、色々と細かいこだわりがあるようで、
「ねぎぼうずのあさたろう」が更に楽しめる様な見所ポイントを沢山お伺いしました!!
登場するキャラクターの数は郡を抜いて多い作品!
徐々にお気づきの方も多いでしょうが、「ねぎぼうずのあさたろう」には、
毎回新たなキャラクターが凄く沢山登場してきます。
主要キャラクターの他にも、悪者、その子分達、そして町を歩いている人々など・・・
稲上さん曰く「今まで仕事をしてきた中でも一番多くて大変!」だそうです。
お察しします・・・。
そして、その登場人物が全て野菜!(中には加工品や果物も混じっているそうですが)
更に、時代は江戸時代末期!
という訳で、ちらっと登場するだけのキャラクターも
「野菜の設定」「服装・髪型」「身分」「職業」などを全部デザインされているそうです。
(このお話を伺った時点ではまだ1,2話放送直後でしたが、デザインされた人数は既に
100体を超えてらっしゃいました!)
↑それぞれのキャラクターにはこんなに細かく指示が・・・。
(後ろの方に見えるのは、キャラクターの背の高さを相対的に表わしているもの!)
キャラクター設計書には、正面・横・後ろの3面図の他にも、
様々な表情集、髪型(こちらも色々な角度から)、小物(くし、かんざし等)のなどや、
着物、その着方まで・・・。
設定(農村、公家、町)によって立ち姿も変えているそうです!!
細かく設定する事によって、作画の方達に指示される意味もあるのですね。
やはりオリジナルキャラクターは大変!
どのキャラクターにも思い入れはあるそうですが、
やはり原作に出てこない、オリジナルキャラクターを生み出される時が一番大変だそうです。
まず野菜の設定(!)から始まる訳ですからね・・・。
「何でも実際に感触を確かめてから」
が信条の稲上さんの頭の中は今、野菜の事で一杯だそうです。
スーパーへ行っても、テレビを見ても、本を見ていても・・・(笑)
まるで野菜博士のよう。(野菜の時代設定もちゃんと調べてあるそうです。)
勿論「ねぎぼうず」も実際に見に行かれたそうですよ。
ちなみに、渡辺さんや塚田さんも頭の中は、幕末で一杯だそうです(笑)。
普通では気が付かないこんな見所に注目!!
稲上さん渾身のオリジナルキャラクターは是非注目したいとこですが、
その他にも細かい部分で実はたくさん見所があるのです・・・。
【1】 刀(かたな)
色々な野菜のキャラクターが登場しますが、それぞれが使っている「刀」。
野菜にちなんで凄く細かい部分まで設定されているのです。
まずあさたろうの刀。
ねぎの茎で出来ているのは何となく気が付かれた方もいるかと思いますが、
なんと刃先がねぎの切り口!になっています。
↑色々細かく描いてあります・・・。
きゅうべえの刀はきゅうり。やつがしらの親分と子分達の刀はおいもが連なっています(!?)
先週出てきた干し柿達もそういえば・・・。
それから、にきちの刀も要チェックだそうです!
【2】 着物・小物
着物の柄も、みんな野菜にちなんでデザインされています。
更に財布についている飾りもねぎの小口が付いていたりして・・・気になりますねぇ。
稲上さん曰く、「何となく伝わればいいな・・・。」との事です。
細かくチェックされると、実際には鞘に戻らない刀があったりして・・・それもまた気になりますねぇ。
【3】 アウトライン等
絵本での絵の具を重ねていく様な味のある色合いの出し方と、
アニメでの色の表現方法は、当然全く違います。
原作の雰囲気を表現するのにはとても苦労されたそうです。
そこで、線の表現を増やす事で表情を少し複雑にされたりして・・・。
ところが、線を増やしていくという事は、絵を動かすアニメーターの方にとっては
とても大変な作業になっていく一方なのだそうで。
そういう葛藤がありながらも、様々な工夫をされているとの事。
例えばキャラクターの顔のアウトラインは色の付いた線になっています。
また、立体的になるように顔に影が付いています。
そうする事で顔の表情がきりっとしてくるそうです。(・・・本当だ!)
↑おようちゃんの涙にも指示が・・・。
実際に「あさたろう」を見ていても、子ども達の反応を見ていても、
改めて思う事は「時代劇っておもしろい!」ということ。
刀を抜く真似をしたり、大笑いをしている子どもの姿を見ていても、
時代劇をすんなり受け入れている事がわかります。
そこで、実際に作っている方々が思う「時代劇の面白さ」を語って頂きました。
こんな所が格好良い!
・ まずやっぱり「殺陣(たて)」の格好良さ。
・ 勧善懲悪がはっきりしている。
・ 義理人情のあるところ。
この様に、昔から同じパターンを繰り返している時代劇だけれど、
(落語が毎回笑えるように)時を経ても常に格好良く感じられる
・・・そういう部分の魅力はあると思います。
あさたろうだって、見てみると想像以上に格好良いですよ!
ちょっと抜けた部分がある
あさたろうは、そのまっすぐな心故に何事にも正面からぶつかっていく格好良さがありますが、
同時にちょっと抜けている所もあって、勘違いをしたり、失敗したり。
そういったコメディの部分というのは、
実はどんな時代劇にも必ず盛り込まれているそうです。
どじな役の人が出てきて、どたばた劇を繰り広げたりする様子は馴染み深いですね。
そんな風に、シンプルでわかりやすい面白さ・・・というのが
最大の魅力だとおっしゃっていました。
小さい子でも楽しめるのもうなずけます。
浪曲やこももの歌が導入されて、ミュージカル風な楽しさを味わえる所も
特筆点ですね。
稲上さん、渡辺さん、塚田さんに、原作絵本の魅力も語って頂きました!
渡辺さん(美術)
義理人情に溢れるストーリーですね。
あさたろうの「一度こうと決めたら」人に何か言われようがされようが
貫き通す性格、それでいて調子っぱずれな部分がある所も温かみを感じます。
塚田さん(色彩)
あさたろうの性格の魅力はもちろん、
あさたろうが父と出会うまで、その伏線のエピソードなどはとてもワクワクしますね。
稲上さん(キャラクター)
絵の魅力は勿論ですが、絵だけでなく手描きでかかれている文字もとても味わいがあって
楽しい雰囲気を醸し出していると思います。
実際に飯野先生が読まれている声が聞こえてくるような・・・。
(稲上さんのキャラクター設計書の字も筆で描かれています。遊び心を大切に・・・という
思いを引き継いでいるのかもしれませんね。)
そんな風に語って下さった3人方ですが、
「この絵本をアニメにする」と初めてお聞きになった時は、
「え!どうやって?これは大変だ・・・」
皆さん一様に驚かれていたそうですよ。(内緒でご報告。)
最後にアニメ「ねぎぼうずのあさたろう」は他のアニメ作品とここが違う!
教えて頂きました!
絵本っぽいものを・・・
この作品の魅力は「わかりやすい」ことだそうです!
小さな子でも、はらはらしたり、笑ったり、あさたろうと一緒に旅をしている気分になれそうですね。
そして「こだわり」。
大人でも何度見ても楽しめる位、細かい部分までこだわっています。
更に、背景や色なども改めて味わってみるのもおすすめです。
「アニメだけれど絵本を感じる様なものをつくりたい。」
これは、この作品に関わっている方達全員の共通した想いだそうです。
「子ども達が、見ることで楽しい時間を過ごして欲しい!」
という絵本と共通するわかりやすい目的を感じて嬉しくなってきますね。
さぁ、今後の展開もますます目が離せないアニメ「ねぎぼうずのあさたろう」。
是非ご覧くださいね。
◇おまけ◇
こんな資料も見せて頂きました!
↑この細かい表、何だかわかりますか?
秒単位で進んでいく画面の進行表だそうです。
セリフ、場面、動き、音楽等・・・がとにかく細かく書き込まれているのを
プロデューサーの浅間さんが丁寧に説明して下さったのですが・・・
やはりよく理解できませんでした!(ごめんなさい。)それだけ細かく立体的な作業が
行われているのです。
↑ちなみにこの表は、オープニング曲の一場面。
あさたろうの顔のアップが出てくるほんの数秒にもこれだけの指示と
作画があります。あさたろうの顔の線も細かく修正されています。
↑そして穂が揺れる部分では、その動き方が細かく書き込まれています。
(こちらも見ていても何の数字なのかわからないのです・・・)
↑この場面は見覚えがありますね!
背景とアニメーションの部分が重なった絵ですね。
どのお話もとても新鮮で、とても長い記事になってしまいました。
記念にぱちり!
あさたろうだけでなく、すっかり稲上さん、渡辺さん、塚田さんの
ファンにもなってしまいました。
貴重なお時間、ありがとうございました。
東映アニメーションHPはこちら>>>
絵本ナビ特別企画「ねぎぼうずのあさたろう特集」第1弾はこちら>>>
絵本ナビ特別企画「ねぎぼうずのあさたろう特集」第2弾はこちら>>>
絵本ナビ特別企画「ねぎぼうずのあさたろう特集」第3弾<前編>はこちら>>>
絵本版「ねぎぼうずのあさたろう」シリーズはこちら>>>